農経しんぽう
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  農経しんぽう  
  令和8年1月5日発行 第3581号  
     
   
     
   
  本格始動する食料・農業・農村基本計画  
     
   新しい農政がいよいよ本格始動する。政府は昨年4月、令和6年に改正された食料・農業・農村基本法に基づく初の「食料・農業・農村基本計画」を閣議決定した。同計画は25年ぶりに改正された基本法の理念の実現に向け、初動5年間で農業の構造転換を集中的に推し進めるよう策定。そして、基本計画の実効性を高めるため、2030年の目標年までの達成が掲げられた目標・KPIが設定されている。これらの目標・KPIの達成に向け、2026年は大きな前進を遂げる年となるだろう。大きな動きが予想される新年の初頭に当たり、改めて基本計画の内容を見る。
 
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  5年で農を構造転換/食料・農業・農村基本計画  
     
   昨年4月に閣議決定された新しい基本計画では、改正基本法が掲げる「食料安全保障の確保」「環境と調和のとれた食料システムの確立」「多面的機能の発揮」「農業の持続的な発展」「農村の振興」の5つの基本理念に基づき、施策の方向性を具体化。計画期間を5年に設定し、初動5年間で農業の構造転換を集中的に推し進めるとしている。そのうえで、基本計画の実効性を高めるため、施策の有効性を示すKPIを設定している。 基本計画における2030年までの主な目標・KPIでは、▽我が国の食料供給=目標/食料自給率 摂取ベース:45%↓53%、国際基準準拠:38%↓45%▽輸出の促進=目標/農林水産物・食品の輸出額1・5兆円→5兆円(米輸出4・6万トン→35万トン)▽環境と調和のとれた食料システムの確立等=目標/温室効果ガスの削減量808万トン―CO2→1176万トン―CO2(2013年度比)▽農村の振興=目標/農村関係人口の拡大が見られた市町村数356→630市町村―などを掲げている。
 また、生産現場に大きく関わる「食料自給力の確保」における目標とKPIの一部をみると、次の通りとなっている。
 ▽食料生産の基盤である農地の維持のため、農地総量の確保を図るとともに、担い手への農地集積率の向上を図る。目標/農地面積:427万ヘクタール→412万ヘクタール。KPI/担い手への農地集積率:60・4%→7割▽サステナブルな農業構造の構築のため、49歳以下の担い手の確保を図る。目標/49歳以下の担い手数:現在の水準(2023年:4・8万)を維持。KPI/農業分野の生産年齢人口のうち49歳以下のシェア:54%→全産業並み(2024年:64%)に引き上げ▽担い手の生産性の向上のため、米の生産コストの低減を図る。この実現に向け、(1)大区画化等による担い手の労働費の削減(2)サービス事業者を通じた機械の共同利用による低コストでのスマート農業技術の活用(3)米の単収の向上とともに、これに資する多収化や高温耐性等品種の育成に取り組む。これらにより、米輸出について低コスト産地を育成する。
 目標/15ヘクタール以上の経営体の米生産コスト:60キロ当たり1万1350円→9500円。KPI/全経営体の米生産コスト:同1万5944円→1万3000円、水稲作付面積15ヘクタール以上の経営体の面積シェア:3割→5割、基盤整備実施地区における担い手の米生産コストの労働費:現状比6割減、サービス事業者数:5701→7900経営体、スマート農業技術を活用した農地面積の割合:20%→50%、米の単収:主食用10アール当たり533キロ→555キロ(4%増)、新市場開拓用同548キロ→628キロ(15%増)、多収化や高温耐性等に資する品種の育成:35品種―など。
 これらの単収向上等のKPIは米のほか、麦、大豆、野菜、果樹、畜産物、甘味資源作物などについても同様に設定。
 基本計画ではこれらの目標やKPIを目標年の2030年までに達成するには、生産性の抜本的向上が必要であると指摘。そのための施策として「農地集約化と産地づくりの推進、大区画化等の基盤整備による良好な営農条件の確保、スマート農業技術の開発・導入と、機械の共同利用等を通じた技術導入を促進するためのサービス事業者の活動支援、多収化や高温耐性などに資する品種の開発・導入等により、生産コストの低減を図り、労働生産性(1経営体当たりの生産量)と、土地生産性(単位面積当たりの生産量)の向上を進める」としている。

 
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  計画達成に資する先進技術/食料・農業・農村基本計画  
     
   基本計画が掲げる目標・KPIの達成に資する先進技術についてみると、生産性向上・生産コスト低減の技術としては、▽農地の大区画化等の基盤整備▽スマート農業技術の導入▽ドローン直播等▽乾田直播・再生二期作等の実証・導入▽多収性・高温耐性品種の開発・導入▽適量施肥等の精密管理▽排水対策(麦・大豆)―などが提示されている。
 また、環境負荷の低減に向けた対応技術としては、▽J―クレジット制度等も活用した中干し期間の延長▽メタン削減技術の開発・利用▽水稲有機栽培技術の普及(自動抑草ロボット、乗用型除草機等を活用した機械除草体系の確立・普及)―などを示している。
 具体的な栽培体系の一例をみると、農研機構は昨年12月に開催した「水田輪作新技術プロジェクト」キックオフフォーラムにて「高収益水田輪作を実現する省力スマート技術パッケージ」を提案した。土地利用型農業で水田をフル活用して生産性と収益性を向上させる新たな農業技術として、同機構がパッケージ化したもの。
 内容をみると、NARO(農研機構)方式乾田直播・スマート農業技術導入による省人化(時間当たり収益向上)及び多収品種・多収栽培技術導入による多収化(面積当たり収益向上)を組み合わせて生産性向上を図るもので、同機構はそれらの要素技術の開発を令和3〜7年度に進めてきた。乾田直播では「乾田直播栽培技術マニュアル―プラウ耕鎮圧体系―」を取りまとめており、昨年11月には東北地方における乾田直播栽培技術標準作業手順書の新たな地域版6編を公開。また、多収品種では多収で暑さに強い良食味品種「にじのきらめき」などを育成。
 農研機構はキックオフフォーラムにて、これらの水稲低コスト生産技術と、麦・大豆をはじめ飼料用トウモロコシやタマネギなどの生産を組み合わせた水田輪作を提示。令和8年から(1)要素技術のパッケージ化(2)地域に合わせたチューニング(3)パッケージ技術SOP作成などによって、各地域で水田輪作体系を構築し、普及を推進していくとしている。
 また、同フォーラムでは実証事例として、多収品種「にじのきらめき」を活用した関東における乾田直播栽培の取り組みなども示した。

 
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  2023、2024年の米・麦・大豆作の姿/食料・農業・農村基本計画  
     
   新たな食料・農業・農村基本計画では「技術体系の将来像と経営モデル(水稲・麦・大豆の2年3作)」と表して、今後開発・普及されるスマート農業技術等の活用を前提として実現し得る、営農類型ごとの省力的な技術体系の見通しとその際の経営の姿を提示。2030年・2040年の姿として、次のような経営の姿を示している。
 【2030年の姿】農地面積30ヘクタール、労働時間2177時間(2名)、粗収益4555万円、経営費3457万円、所得1098万円。データを活用した経営・生産管理。
 ▽耕うん・整地:全品目/自動走行トラクタ(有人・無人協調)▽育苗・移植・播種:水稲/自動運転田植機。麦・大豆/自動操舵システムを活用した播種▽管理:全品目/水位センサー・自動給水装置、リモコン式除草機(畦畔等の除草)、農薬・肥料散布ドローン▽収穫・運搬:全品目/自動運転コンバイン▽乾燥・選別・出荷:全品目/乾燥調製システム(委託)
 【2040年の姿】データを活用した経営・生産管理。
 ▽耕うん・整地:水稲/不耕起直播の場合は不要。麦類・大豆/不耕起栽培の場合は不要▽育苗・移植・播種:全品目/ドローンを用いた直播、不耕起播種機の自動化▽管理:全品目/自動航行・農薬の自動装填が可能なドローン、株間除草等も可能な自律走行型除草機▽収穫・運搬、乾燥・選別・出荷:全品目/コンバインと搬出・運搬トラック、乾燥調製施設(委託)の連動
 ここで示された将来像は、2030年は既存のスマート技術のより本格的な普及が広がった姿となっており、2040年は現時点で萌芽しつつある新しい技術の開発・社会実装が進んだ姿であるように見受けられる。実現には関係者による一層の尽力が必要となる。

 
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  環境調和の食システム確立/食料・農業・農村基本計画  
     
   食料・農業・農村基本計画において「環境と調和のとれた食料システムの確立」で掲げられた主なKPIは次の通り。
 ▽分野別の温室効果ガス排出削減量・吸収量燃料燃焼による削減量:95万トン―CO2(2022年度)↓156万トン―CO2。農地土壌からの削減量:52万トン―CO2(2022年度)→141万トン―CO2。畜産分野における削減量:29万トン―CO2。農地土壌における吸収量:660万トン―CO2(2022年度)→850万トン―CO2▽農業分野のJ―クレジットの認証量(累積)1・9万トン―CO2(2023年度)→60万トン―CO2▽生物多様性の保全・化学農薬使用量(リスク換算)の低減(2019農薬年度比):15%低減(2023農薬年度)→10%低減▽化学肥料使用量の低減(2016肥料年度比):11%低減(2022肥料年度)→20%低減▽有機農業の取り組み面積:3・0万ヘクタール(2022年度)→6・3万ヘクタール▽バイオマス利用率:76%(2021年度)→80%―など。

 
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  田植え不要の米作りコンソーシアム開催/農林水産省  
     
   農林水産省は昨年12月17日、都内霞が関の同省7階講堂において、「第2回田植え不要の米作りコンソーシアム」を開催し、オンライン含めて全国から1400名以上が参加した。今回は第1回の「節水型乾田直播」に続いて、「乾田直播・湛水直播」がテーマ。実践農業者や農業サービス事業体をはじめとした生産サイドから、技術開発を担う(株)クボタなど農機企業・研究機関、流通・小売り、行政まで幅広い登壇者が一堂に会し、導入事例や成果、課題について情報共有を行った。
 開会挨拶した農林水産省農産局の山口靖局長は、「乾田直播は農業人口が減る中で、経営面積を拡大していく観点からも非常に重要な取り組み。一方で関係各位からは様々な心配や要望も出ているので、本日は各立場からの課題を提示して意見交換をしてほしい」などと期待を寄せた。
 続いて同省農産局穀物課の尾室義典課長が「乾田直播・湛水直播の現状について」説明。労働力不足が顕在化する中で、田植えをせず軽労化できる栽培法として水稲直播の栽培面積が徐々に増加。移植栽培と組み合わせて春作業のピーク分散ができることから、規模拡大を図る担い手の取り組みが増加し、令和5年産は全国で約3・9万ヘクタールとなった(前年比5%増、全水稲作付面積の約2・9%)。直播技術には(1)湛水直播(2)乾田直播(3)節水型乾田直播の3種があり、(1)(2)は既に技術確立しているが、さらなる普及には導入ハードルの低減が必要などと示した。
 その後、取り組み事例紹介とパネルディスカッション、関連政策紹介が行われた。取り組み事例紹介のうち、クボタ農機国内本部担い手戦略推進室技術顧問・木田浩司氏は、クボタによる水稲直播で経営発展を目指す担い手支援の取り組みを発表。同社では移植と直播を組み合わせて、春作業の前倒しなど顧客の課題解決を推進。直播機械体系の提案はもちろん、栽培技術ガイドの発行やセミナーの開催など、ハード・ソフトの両面で直播導入をサポートしており、山形や滋賀などで実証を行いデータ収集を進めている。機械装備の面では湛水直播はコーティング機器など比較的少ない投資で始められるのに対し、乾田直播では大型作業機が増え、重量や作業負荷が増すため大型トラクタが必要と指摘。クボタでは直播の播種体系として、湛水直播向けに湛水直播機や農業用ドローン、代かき同時播種機など、乾田直播向けにドリル型播種機や耕うん同時播種機、不耕起V溝直播機など取り揃えており、この1月には3方式の播種に対応する新たな湛水直播機「NDS―600F/800F」を発売予定などと語った。

 
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  2025年農業技術10大ニュースにアテックス、サタケ選出/農林水産省  
     
   農林水産省は12月19日、「2025年農業技術10大ニュース」を公表した。第3位に「日本初の有人監視型自動運転草刈機」((株)アテックス)、第9位に「『コメクト』始動!DXでライスセンターをスマート化」((株)サタケ)が選ばれた。
 同10大ニュースは、2025年の1年間に公表された農林水産分野の研究成果について、その内容と社会的関心の高さを基準として、農業技術クラブ(農業関係専門紙・誌など30社)の会員投票により毎年、選定しているもの。
 2025年の農業技術10大ニュースは、(1)地下まで効く!ナガエツルノゲイトウ防除技術―まん延を防いで、農家の負担を軽減(農研機構)(2)農業を守る光の力:ドローンで鳥獣害対策に革新―自動航行とレーザー照射で広範囲をスマート防御((株)NTT e―Drone Technologyなど)(3)日本初の有人監視型自動運転草刈機―安全・効率・省力化を実現する、見守るだけの草刈作業((株)アテックス)(4)温暖化時代の果樹適地予測マップ―持続可能な果樹生産に貢献(農研機構)(5)赤色レーザーダイオードが植物の成長を促進―LEDを超える「次世代の光源」の効果を世界で初めて確認(東京大学)(6)赤い果実は太陽を浴びた証 ぶどう新品種「サニーハート」登場―ハートのような果実を口に含めば、味わい新感覚(農研機構)(7)ももの樹の動画を用いてAIが水分状態を診断―初心者でも簡単、正確にかん水タイミングを判断(農研機構)(8)海水から肥料原料を確保!―肥料原料の国産化で食料安全保障に貢献(産業技術総合研究所)(9)「コメクト」始動!DXでライスセンターをスマート化―反収も品質も見える化、利益改善に貢献((株)サタケ)(10)ダイズ・根粒菌共生系で温室効果ガスN2Oを削減―開発した共生系によりN2O排出量を74%削減(農研機構など)。
 このうち、アテックスの自動運転草刈機は、国内企業としては初の有人監視型自動運転草刈機を開発・販売した。従来の自動運転草刈機のように、作業場所をフェンス等で囲う必要はなく、オープンなスペースでも安全に自動運転による草刈りが可能。
 サタケの「コメクト」は、ライスセンターや精米工場でDXを活用し、生産情報を収集・分析することで生産性を高め、顧客の利益改善に貢献する生産支援システム。圃場ごとの反収や品質も表示できる。

 
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  農業の構造転換を/センサスが示した日本農業の現状  
     
   昨年の農業をめぐるトピックの1つに「2025年農林業センサス結果の概要(概数値)」が公表されたことがあげられよう。これは国が5年ごとに実施している基幹統計調査であるが、農林業センサス2025では、この5年間で農業経営体が24万7000(23・0%)減少し、基幹的農業従事者は34万2000人(25・1%)減少した事実が示された。これは比較可能な1985年以降のデータで過去最大の減少率となっており、まさにこれから、日本農業は誰がどのように担っていくのかという大問題が改めて突きつけられた形である。農林業センサス2025結果概要を今一度紐解き、日本農業の現状について眺めてみる。
 昨年11月末に公表された農林業センサス2025概要(概数値)をみると、昨年2月1日現在における基幹的農業従事者は102万1000人となり、5年前に比べて34万2000人(25・1%)減少した。減少の約7割を65歳以上が占めており、農業人口の高齢化が減少の主な要因とみられる。農業従事者の平均年齢が67・6歳であることを鑑みると、今後も高齢化の進行等により、農業従事者が一層減少していくことは避けられない。
 これに対する農林水産省の対応としては、鈴木憲和農林水産大臣は昨年12月の記者会見で「農業の構造転換を速やかに進める必要がある」と述べた。そして「将来にわたって日本の食料を安定供給していけるように、まず営農して稼ぐことができ、暮らしていける農政を展開する。地域農業の担い手の育成・確保を進めていくことが急務」とし、「地域計画のブラッシュアップ等を通じて、新規就農支援や既存の担い手の規模拡大、地域外からの担い手の参入や食品企業をはじめとする法人の農業参入等の推進に引き続き取り組んでいく」などと対応策を語った。
 鈴木農相が語る農業の構造転換は、食料・農業・農村基本計画で掲げている担い手への農地の集積・集約化や49歳以下の担い手の確保、農地の大区画化・スマート農業技術の導入などによる生産コストの低減ならびに1経営体当たり生産量の向上などが具体的内容としてあげられるだろう。
 農林業センサス2025においても集積・集約化やスマート農業技術の導入が進んでいる状況がデータとして示された。団体経営体は3万9000経営体となり1000経営体(2・9%)増、うち法人経営体は3万3000経営体で2000経営体(7・9%)増加した。団体経営体に占める法人経営体の割合は84・0%(4・0ポイント増)。法人経営体の内訳は会社法人が2万3000経営体で、5年前に比べ3000経営体(14・4%)増加している。
 また、経営耕地のある農業経営体の1経営体当たりの経営耕地面積は3・7ヘクタールで、5年前に比べ19・4%増加。地域別では、北海道34・5ヘクタール(5年前比14・2%増)、都府県2・6ヘクタール(同18・2%増)となり、全国で担い手への農地集積・集約が一層進んでいるのが見て取れる。
 経営耕地面積規模別に農業経営体数の増減率をみると、北海道では100ヘクタール以上層で、都府県では10ヘクタール以上層で農業経営体数が増えた。北海道では100ヘクタール以上が7・7%増えたのに対し、100ヘクタール未満は軒並み減少。都府県は10〜20ヘクタールが2・8%増、20〜30ヘクタールが11・9%増、30〜50ヘクタールが15・8%増、50〜100ヘクタールが22・1%増、100ヘクタール以上が45・8%増となっている一方で、10ヘクタール未満は総じて減少している。
 また、農業経営体の経営耕地面積を規模別にみると、20ヘクタール以上の農業経営体の経営耕地面積が全体の51・0%(同6・7ポイント増)と過半数を占めている。特に100ヘクタール以上が15・7%(同4・6ポイント増)と伸びが著しい。
 一方、データ(気象状況、市況、農作業履歴、生育状況等の情報)を活用した農業を行っている農業経営体数は33万1000経営体で、農業経営体に占める割合は40・0%となった。うち最も多いのは「気象・市況等のデータを見て農業」の29万9000経営体、次いで「農作業履歴等のデータをパソコン等で記録」が9万9000経営体、「データ分析を活用した営農上のサービスやサポートを利用」が3万3700経営体、「機器・センサーを用いて生育状況等のデータを計測・取得し分析」が2万4000経営体となっており、データを収集・分析したうえでそれを次の営農改善に活かす本格的なデータ駆動型農業を行っているのはごくわずかであることが見て取れる。
 他方、新しい基本計画において、食料安全保障の確保を進めるうえで、重要な柱として位置づけられている輸出の促進については、農産物の輸出を行っている経営体は8388となり、農業経営体全体の1・0%とごくわずか。さらに農業生産関連事業の加工品等の輸出を行っている経営体数は966であり、全体の0・1%となっている。
 その他、農林業センサス2025の項目をみると、販売目的で水稲を作付けした農業経営体数は53万3000経営体で、5年前に比べ18万1000経営体(25・3%)減少した。水稲作付面積規模別に農業経営体数の増減率をみると、5年前に比べ15ヘクタール未満の各層では減少しているものの、15ヘクタール以上層では増加した。 また、農産物販売金額規模別に農業経営体数の増減率をみると、5年前に比べ3000万円以上層で農業経営体数が増加している。

 
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  マップ連動防除のオプション部品を発売/井関農機・2026年新商品  
     
   井関農機(株)(冨安司郎社長・愛媛県松山市馬木町700)は、2月から乗用管理機「JKZ23CY」にマップ連動防除とオートスライドブームに対応可能なオプション部品を販売する。昨年12月11日に茨城県つくばみらい市で開催した2026年度上期新商品発表会で披露した。
 近年、様々なデータを活用した作物の生産性を上げるシステムの認知が広まり、人工衛星やドローンのセンシングのデータを元に細やかな作業が実現できるスマート農機の需要が高まっている。同社はこの度、乗用管理機JKZ23CY(キャビン)シリーズにマップ連動防除、オートスライドブームの機能が追加可能なオプションを設定した。
 マップ連動防除は、JA全農との共同研究商品で、栽培管理支援システム「xarvio FIELD MANAGER(ザルビオフィールドマネージャー)」(衛星画像とAI分析による最先端の栽培管理支援システム)で作成したマップに連動し、散布ができる。
 それにより、生育に応じた適正な農薬料を散布するので、従来の均一散布に比べて農薬の使用量を低減できる効果が見込める。
 また、マップ連動防除は、みどり投資促進税制の適用対象機に「申請予定」(同社)としている。
 このオプションは、マップ連動防除以外に同社開発のオートスライドブームにも使用できる。オートスライドブームは、すでに散布した領域を判定して散布漏れや無駄な散布の重複がないようにスライドブームを自動伸縮制御させる。
 また、農薬散布マップを読み込むことで圃場区画に対しても自動伸縮制御させる。発売型式は、マップ連動防除&オートスライドブームセット(JKZ23CY用)。

 
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  常温煙霧機に小規模タイプ追加/有光工業  
     
   有光工業(株)(有光大幸社長・大阪府大阪市東成区深江北1の3の7)は、常温煙霧機「ハウススプレー」シリーズに、循環扇を利用する新型「PLV―7N」を追加した。従来機の性能を維持しつつ機能を簡素化し、試験的な導入や短時間散布を想定したモデルとして展開する。操作は薬剤タンクのセット後、攪拌機とコンプレッサーのスイッチを入れて一定時間放置し、停止させるだけとシンプルだ。設置も容易。
 同シリーズは薬剤を加熱せず微細な霧状にして散布する方式で、使用水量が少ないため過湿になりにくい。無人でハウス内に薬剤を充満させられるため、作業者が薬剤を浴びるリスクも低減できる。作物の繁茂部にも霧が入り込みやすく、葉の表裏への付着効果が期待できる。同社は今後、1台で約30アールを対象とする大型ハウス向けモデルの発売も予定している。
 〈製品仕様〉▽対象面積=約7アール(循環扇なしの場合は約2アール)▽寸法=全長452×全幅320×全高746ミリ▽重量=6・5キロ▽薬液タンク容量=7リットル▽噴霧量(1分間)=45〜50ミリリットル▽電源=単相AC100ボルト(3Pアース付き)▽付属品=内径10ミリホース対応ノズル接続部品×各1個
 ▽問い合わせ=同社TEL06・6973・2010

 
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  強力タイガー爪好評/日本ブレード  
     
   日本ブレード(株)(長足章一社長・香川県高松市丸の内11の13)は、昨年6月23日に耕うん爪のラインアップを追加し、「強力タイガー爪」を発売。以来、同品は「さらに耐久性がアップした」と好評を博している。
 耕うん爪はその名の通り土の耕うん、掘り起こし、粉砕に使われ摩耗が早い。そのため爪が持つ特徴の中でも耐久性の高さが重要視される。そこで新商品「強力タイガー爪」は、従来品に比べて耐久性能を50%、砕土性能を20%、反転性能を20%アップした。
 また、超硬合金を爪の母材内部まで溶融させ、これにより摩耗の激しい圃場でも優れた耐久性を発揮するようにした。従来品になかった力強い反転性を有しながら、強力タイガー爪は性能を持続させる耐摩耗性を持つ。
 強力タイガー爪が適する圃場および作業は、畑作などの耕うん回数が多い圃場、そして水田の耕うん作業など。大規模農家が使う大型トラクタにうってつけである。
 問い合わせは同社(TEL087・821・5872)まで。

 
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  農機整備用リフトが好評/ヤマト自動車  
     
   ヤマト自動車(株)(堀江聡社長・大阪府大阪市福島区福島7の13の4)が手掛ける農機整備用リフト「YM500(愛称:ふみよくん)」および「YM700」は、長年にわたり円滑な農機整備に貢献している。なかでも中核モデルのYM500は、販売開始から約35年にわたり愛用されロングセラーとなっている。YM500が誕生した約35年前、大型農機の整備作業は危険を伴う重労働であった。この課題を一気に解決するため、最大5トンクラスの農機を安定してリフトアップする能力と、作業者が安心して作業できる頑丈な構造を同リフトで確立した。
 YM500のふみよくんという親しみやすい愛称とは裏腹に、メーンシリンダーの両側に搭載された強固な安全ロック機構は、作業者の命を守るための同社の揺るぎない安全思想の象徴である。
 一方、YM500で培われた耐久性と基本設計の優秀さを土台に、近年、大型農機の重量増・巨大化に対応するために開発されたのが上位機種の「アグリサポート567(型番:YM700)」だ。YM700は、ふみよくんの信頼性を継承しつつ、リフト能力を最大7トンまで大幅に強化。最新の超大型トラクタやコンバインの重量にも余裕で対応する。
 同社の営業支援室は、「整備現場での導入が進むYM500と700ですが、製品の大きさから、大掛かりな設置工事をイメージされるかもしれません。しかし、事前の土間工事さえ完了していれば、1日で据え付けから試運転までを完遂できます」とPRする。
 実際、どのように農機整備用リフトを整備施設等に設置するのか。以下、3つのポイントをまとめた。
 (1)精密な水平出しと強固な固定=4点のアンカーボルトによって強固に土間へ固定する。これにより、重量のある農機を昇降させる際も揺るぎない安定性を確保する。
 (2)CD管活用によるスマートな配管=油圧ホースおよびエアーホースをCD管内に通線することで、作業場床面に露出する配管を排除。見た目の美しさだけでなく、作業員の足元の安全確保やホースの劣化防止にも寄与する。
 (3)動力接続から即稼働へ=最終工程では油圧ユニットにホース類を集約。電源および1次エアーを接続することで、システムは即座に駆動可能な状態となる。事前のインフラ整備とユニット化された設計により、農繁期を控えた整備工場のダウンタイム短縮に大きく貢献している。
 同社では、農機整備用リフトをYоuTubeで動画配信。本紙に掲載の広告内QRコード、もしくは「農機用リフト」で検索。その他の商品検索は、(ヤマトのWebサイト https://www.yamato-a.net)にアクセスする。
 問い合わせは、同社の営業支援室(TEL06・6458・8124)まで。

 
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  小径苗の植え付けに新型ホーラー/サンエー  
     
   移植器やパイプ抜差し器を製造販売する(株)サンエー(滋賀県草津市新浜町431の3)は、ポット苗や種芋を立ったまま植え付けられる開閉式「ホーラーシリーズ」に、小径苗の植え付けに特化した新型「ホーラーH45P」を追加した。玉ネギ苗やセルトレイ苗など、径4センチ以下の苗に対応する。
 同製品は従来品の「ホーラーミニH45MP」よりハンドルを長くし、腰をかがめずに作業できるよう改良。作業負担の軽減と効率向上を図った。特徴として、苗を入れやすいスキ形状の採用、力加減で深さを調整できる最大25センチの植え付け機構、最大40センチまで伸ばせる「株間測り」の装備に加え、シリーズで初めて「苗シューター」を標準搭載した。苗を投入するだけで容易にセットでき、取り外しも簡単だという。製品仕様は幅29・1×奥行き15・4×高さ78・0センチ、重量1150グラム。希望小売価格(税込み)は1万4410円。
 同社はこの他、コンテナ苗植栽用の植え穴開け器「モーラー」も販売している。山林部の硬い地面での作業を想定し、安定感のある洋鐙型ステップや、木槌で打ち込めるヘッドが使いやすいと好評を得ている。
 ▽問い合わせ=同社TEL077・569・0333

 
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  農機事業統括部と農機渉外部を新設/クボタ・1月1日付機構改革、人事異動  
     
   (株)クボタ(花田晋吾社長)は昨12月16日、2026年1月1日付の役員異動・機構改革・人事異動を発表した。
 内容は次の通り(敬称略。※は2025年10月22日発表済み)。
(2026年1月1日) 『役員異動』
 ▽事業統括ユニット長※、事業統括部長(機械統括部長)エグゼクティブオフィサー福岡誠司
 『機構改革』
(機構改革は、「機械グローバルオペレーション本部」、「機械グローバルカスタマーファースト本部」、「農業機械事業部」を中心に紹介する)。 「機械グローバルオペレーション本部」新設※
 (1)グローバル農機事業管理部を新設(2)アセアン統括本部を移管(3)「調達本部」を移管(4)「製品SCM統括ユニット」を新設し、生産管理統括部、物流統括部、需給管理部を移管、農機海外営業部(新設)を配置(5)製造統括ユニットを新設し、製造企画推進部、KPS推進部、堺製造所、筑波工場、宇都宮工場を移管。・堺製造所に堺製造所油圧機器製造部を新設(6)北米製造SCM統括ユニットを新設。
 「機械グローバルカスタマーファースト本部」新設。(1)機械カスタマーファースト品質推進部、機械カスタマーファースト情報管理部、農機カスタマーサポート部、トラクタ品質保証部、作業機品質保証部を移管(2)農機サービス第一部、農機サービス第二部を新設。
 「農業機械事業部」(新設)※
 (1)「農機事業統括部」「農機渉外部」を新設、ベーシック機械統括部を移管。
 (2)「農機技術統括ユニット」を新設し、農機技術企画部、農機機能開発部を配置、油圧機器技術部、KCセンターを移管。
 (3)「トラクタユニット」を新設し、トラクタ企画推進部を配置、トラクタ技術第一部、トラクタ技術第二部を移管。
 (4)「汎用機ユニット」を新設し、汎用機企画推進部、ターフ技術部、UV技術部、LI技術部、北米ターフ技術部、北米LI技術部を配置。
 (5)「作業機ユニット」を新設し、作業機企画推進部を配置、収穫機技術部、移植機技術部を移管。
 (6)「農機関連商品ユニット」を新設し、農機関連商品企画推進部、農機関連商品技術第一部、農機関連商品技術第二部を配置。
 (7)「農業ソリューション本部」を新設し、以下組織を配置。
 農業ソリューション推進ユニットを新設し、農業ソリューションデジタルプラットフォーム企画推進部、農業ソリューション統括部、農業ソリューション製品企画推進部を配置▽「ビジネスイノベーションユニット」を新設し、GX事業開発部、FVC事業開発部を配置
(8)農機国内本部を移管。
 人事異動は次の通り。(2026年1月1日) 〔企画統括本部〕
 ▽経理・税務ユニット長 兼税務部長吉田愛▽事業管理部長(トラクタ第一事業推進部長兼トラクタ事業統括部長)岡田裕二郎
 〔研究開発本部〕
 ▽研究勤労部(知的財産管理部長)高田和孝▽ 〔製造統括本部〕▽生産技術統括部長(機械生産技術部長)浅野克典
 〔コンプライアンス・品質保証本部〕 
 ▽リスクマネジメント推進部長(コンプライアンス推進部長)森村豊▽ 〔ICT本部〕=略
〔HR本部〕=略
〔機械グローバルオペレーション本部〕
 ▽グローバル農機事業管理部長(作業機事業推進部長)木村圭一▽アセアン事業推進部長 花岡孝▽アセアン事業推進部(アセアン事業推進部長)岩下文雄▽製造企画推進部長(油圧機器事業推進部長)村田将▽堺製造所本機製造部長 生駒英毅▽堺製造所生産技術部(油圧機器生産技術部長)中野信一▽堺製造所勤労部長 松林晃平▽堺製造所油圧機器製造部長(油圧機器製造部長)南一幸▽筑波工場機械加工部長 助野公洋▽筑波工場KPS推進部長(筑波工場機械加工部長)上野弘巳▽製品SCM統括ユニット長(生産管理ユニット長)兼需給管理部長久野満宏▽農機海外営業部長(トラクタ海外営業第二部長兼トラクタ第五事業推進部長)岩井一樹
 〔機械グローバルカスタマーファースト本部〕 ▽機械カスタマーファースト品質推進部(モノづくり本部副本部長兼生産技術統括部長)礒永毅▽同(建設機械品質保証部長)中西正樹▽同(農機国内サービス部長)西出智史▽農機サービス第一部長(農機海外サービス部長)田所浩▽農機サービス第二部長 田伏力也
 〔農業機械事業部〕
 ▽農機事業統括部長(機械事業推進部長)別府俊之▽農機渉外部長(機械業務部長)木下武志▽農機技術企画部長(トラクタ技術企画部長)吉井伸幸▽農機機能開発部長(機能開発部長)西野顕史▽油圧機器技術部(油圧機器事業ユニット長)中谷安信▽トラクタユニット副ユニット長(トラクタ第二事業ユニット長)西別府英▽トラクタ企画推進部長(機械海外総括第二部長兼機械海外総括第一部長)益田有恒▽トラクタ企画推進部(トラクタ第二事業推進部長)伊籐慎文▽汎用機ユニット副ユニット長(トラクタ第五事業ユニット長)宮田尚稔▽汎用機企画推進部長(トラクタ第三事業推進部長)小見山順成▽ターフ技術部長(トラクタ技術第三部長)小森田武史▽UV技術部長(トラクタ技術第四部長)堀内義文▽LI技術部長(トラクタ技術第五部長)大山孝昌▽北米ターフ技術部長 マーク・ブロイツマン▽北米LI技術部長 スチュワート・ボイド▽作業機ユニット長(作業機事業部長、作業機海外営業部長)近藤博幸▽作業機企画推進部長 藍原正典▽農機関連商品ユニット長(農業ソリューション事業ユニット長)星英康▽農機関連商品企画推進部長(インプルメント事業推進部長)植田健弘▽農機関連商品技術第一部長(農業ソリューション技術第一部長兼農業ソリューション技術第二部長)吉井秀夫▽農機関連商品技術第二部長 池田直人▽農業ソリューション推進ユニット長兼農業ソリューション製品企画推進部長(トラクタ第四事業ユニット長兼トラクタ第四事業推進部長)川添勝▽農業ソリューション推進ユニット(機械新規事業推進ユニット長兼機械新規事業統括部長)山崎祐一▽農業ソリューションデジタルプラットフォーム企画推進部長(アグリソリューション事業企画推進部長)利根川卓也▽農業ソリューション統括部長(グローバル統括部長)星野澄▽ビジネスイノベーションユニット長(ビジネスインキュベーション部長兼ビジネスアクセラレーション部長)辻村克志▽GX事業開発部長 楠本敏晴▽FVC事業開発部長 本多充▽農機国内業務部長 井上恭志
 〔その他〕
 ▽(株)みちのくクボタ社長((株)南東北クボタ社長)矢部建▽(株)南東北クボタ社長 富田健一▽(株)福岡九州クボタ出向(農機国内業務部長)常田信▽(株)中九州クボタ社長 宇部善男

 
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  大阪で「みらいのけしき展」開く/ヤンマーホールディングス  
     
   ヤンマーホールディングス(株)(山岡健人社長)は昨年12月18〜25日、大阪・うめきたエリアの複合施設「PLAT UMEKITA(プラットウメキタ)」と、YANMAR FLYING―Y BUILDING(ヤンマー本社ビル)の1階にてYANMAR DESIGN みらいのけしき展 ОSAKAを開催した。同展は、ヤンマーがこれまで取り組んできたデザインの歩みと、デザインで描く未来のけしきを紹介する目的で開催され、初日にはクリエイティブディレクターの佐藤可士和氏とヤンマーホールディングスマーケティング部デザイン部長の土屋陽太郎氏が企業とデザインの可能性について語った。
 同展の開催に先立ち、初日には報道関係者に向けた内覧会があり、ヤンマー本社ビルの入口前に展示されたカスタムトラクタ「YT357R」について、ヤンマーホールディングスマーケティング部デザイン部の並木育男副部長が報道陣に説明した。
 並木副部長は、「梅田のメーンストリートともいえるこの場所にカスタムトラクタを展示することで、農業に携わらない一般の方々の目に留まり、農業で使うトラクタはカッコいいというイメージをもっていただければ」と展示の意図を話した。
 カスタムトラクタは、農家のわくわく感を刺激するべく、所有者自身がパーツや装飾を自分好みのものに調節できる。これにより農作業の現場で創造性と個性をもたらし、新たなデザインの可能性を提案する。今回展示されたカスタムトラクタには以下の7点を取り付けた。
 (1)反射仕様グラフィックセット(2)ルーフキャリアセット(ルーフボックス、ライト装着例)(3)サイドラダー(左右2種)(4)シートカバー(クールメッシュシート仕様)(5)後方作業用メーター(6)小型ヘッドマウントディスプレイ(7)フットライト。
 並木副部長は、「ヤンマーは柔和強健(にゅうわごうけん)のデザイン思想があり、柔和は親しみやすさ、強健はトラクタのようにしっかりと機能し働く、といったことを表します。この思想を基に、デザイン性と機能性が両立したカスタムトラクタを提案しました」とし、「今後はお客様の声を聞きながら検証を進めていく。今回は参考出展という位置付けのため、現時点でカスタマイズのサービス提供時期は未定です」と話した。
 続いてPLAT UMEKITAの会場に移動した報道陣は、ヤンマーホールディングスマーケティング部デザイン部の土屋陽太郎部長からヤンマーのデザイン戦略について説明を受けた。
 会場入口にはヤンマー創業者の山岡孫吉氏が世界で初めて小型実用化に成功した小型横形水冷ディーゼルエンジン「HB形」が鎮座し、その横には最新の水素エンジン「4TN101 HYDRОGEN CОNCEPT」が展示され来場者の耳目を集めた。
 また、会場でひと際目立つコンセプトトラクタ「YPV―L」について土屋部長は、「2035年の農業を想定してデザインした。産業機械として稼働するために夢のようなデザインでなく、様々なアイデアを詰め込み、現実味を帯びたデザインにした。このデザインの過程で生まれたアイデアなどを現在生産しているトラクタにも詰め込んでいきたい」と力を込めた。
 午後には、デザインが描くみらいのけしきをテーマにしたトークセッションが開かれ、2012年からヤンマーのブランディングに尽力した佐藤可士和氏と土屋部長が登壇。一般の来場者が続々と参加し、会場は熱気に包まれた。
 司会者からの「ヤンマーのロゴであるFLYING―Yは佐藤さんにデザインしていただきました。佐藤さんがよく語られるアイコニック・ブランディングとは何か」という質問に対して佐藤氏は、「戦略的に象徴を考えないと相手に伝わりにくい。アイコニックは象徴という意味ですが、象徴には物語や意味が内包されていて初めて象徴となる」などと企業を象徴するロゴ作成の難しさを話した。

 
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  電動機器が各種分野で活きる/ササキコーポレーション  
     
   (株)ササキコーポレーション(佐々木一仁社長・青森県十和田市里ノ沢1の259)の電動機器が新たな展開をみせている。1つは、昨年12月16日に都内で行われたウェルエイジング経済フォーラム主催の「Well―being&Age―tech2025Award」で、同社の電動作業機「スマモ」が審査員特別賞を受賞した。同フォーラムは、エイジフリーな社会構築を目指し、幅広い分野で活動を進めており、その中で重要視される食と農の世界において、先んじて高齢化が進む農村地域での省力化に役立つ製品として「スマモ」の技術を高く評価した。
 当日は、営業本部の佐々木悠介課長が同フォーラム代表の佐藤ゆみ氏から賞状を受け取るとともに、スマモの機能・特徴を紹介し、今後も環境と作業者の健康に配慮しつつ農業・農家の労働負担軽減に貢献していくと意欲のほどを語った。
 他方、12月18日にJR西日本の倉坂昇治社長が会見で明らかにしたところによると、同社とともに駅ホームの電動除雪機開発を進めており、すでに越美北線の越前大野駅と美山駅で試行導入。これから実証実験で検証しつつ改良し、2026年度に技術確立を目指す。併せて鉄道他社や狭い場所で除雪ニーズのあるほかの現場への応用可能性も検討していくとした。除雪機開発はリモコン式、遠隔操縦、自律走行の3ステップとし、スタートした現場実証はリモコン式で実施。開発作業はJR西日本がグループ会社のJR西日本テクシアおよびササキコーポレーションと連携し進めていく。
 駅のホームは、狭く滑りやすい、また、端の部分では転落の危険性もある。こうした状況下での除雪作業は、直轄・請負の協力社員が、スノーダンプ、小型ロータリを押しながら歩行で行ってきた。温風装置や融雪マットの活用を検討したが、実運用が難しい、コストが高く全社的な展開は困難などの問題があり、除雪機開発に至った。これからのステップアップにより、コスト減、除雪作業そのものの省人化・省力化を目指す。

 
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  クボタ、ヤンマーアグリ、井関農機、三菱マヒンドラ農機のトップに聞く/農機メーカー新春トップインタビュー  
     
   米価格の上昇などにより好調に推移した昨年の農機市場だが、農家戸数の減少や生産資材価格の値上がりなど不安定要素も強い。令和8年の農機市場はどうなるのか。恒例の農機メーカートップインタビューを行った。
 
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  農業の一層の発展を推進/農機各社 年頭所感  
     
   昨年は米価の上昇による生産機運の高まりがあった一方で、農政においては新しい食料・農業・農村基本計画の策定などの大きな動きがあった。また、資機材の高止まりや労働力不足など生産現場の厳しい情勢は依然として続いており、先行きの不透明感は否めない。令和8年の新春を迎えるに当たり、農機業界各社は今年についてどのように考え、どう進んでいくのか。今年にかける意気込みを寄せていただいた。
 
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  新社長に小薗井氏/タイショー  
     
   (株)タイショー(茨城県水戸市元吉田町1027)は、1月1日付で代表取締役社長に小薗井正美氏(おそのい・まさみ)が就任した。前社長の矢口重行氏は会長に就いた。
 小薗井氏は1970年生まれの55歳。2002年1月に同社に入社。農機営業部業務課課長、取締役環境事業部部長、取締役製造部部長などを歴任し、今回同社トップとして陣頭指揮に当たる。 小薗井氏は、「まず自分たちがたどり着きたいゴールを決め、そのゴールから今やるべきことを導き出す。常にイノベーション、新しい価値を生み出す努力をしています」と、日ごろの業務に向かう姿勢を示しながら、社業発展に意欲をみせている。
 趣味はキャンプ、登山、ハイキング、ツーリング、また、温泉を楽しむアウトドア派。

 
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  インド工場フル稼働/三ツ星ベルト・池田浩社長が会見  
     
   三ツ星ベルト(株)(池田浩社長・兵庫県神戸市長田区浜添通4の1の21)は昨年12月9日、新春向けの記者会見を開催した。2024中期経営計画が終盤に差し掛かる中、計画通りで推移。2030年度の「ありたい姿」に向けて、池田社長は着実に駒を進めている。国内外の生産工場は刷新が進み、インド工場では生産量が増大しており、現地は多忙を極めている。米国と中国の政治的背景にもさほど影響は受けず、各事業は堅調に進む。国内外を飛び回る池田社長が会見に臨んだ。
 
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  プラスワンキャンペーンを実施/やまびこジャパン  
     
   やまびこジャパン(株)(水嶋伸介社長・東京都青梅市末広町1の7の2)は、1月1日から9月30日までの期間限定でバッテリーがもう1個付属されるプラスワンキャンペーンを開始した。
 キャンペーン内容は、予備バッテリー付きの限定モデルが、通常のセット品にバッテリー1個が割引で付いてくるもの。対象製品は、トップハンドルソーBCS510T/25HCG+1、刈払機BSR510U[L]/G+1に、今回から先端アタッチメント交換モデルのB―SAS(バッテリーセレクトアタッチメントシリーズ)が追加された。刈払機BPH511―SR/G+1、T字型バリカンBPH511―TT/G+1、ヘッジトリマーBPH511―HT/G+1、プルーナBPH511―P/G+1が加わっている。
 B―SASシリーズは、アタッチメントを付け替えるだけで様々な作業に対応でき、保管場所や運搬もスマートに行え、造園業者などに重宝される。エコー50ボルトバッテリーマルチツールB―SASは、エンジンツールの力強さを受け継ぎ、機動力を進化させたECHO50ボルトシリーズの新たなラインアップだ。1台のパワーヘッドで「刈払機」、「T字型バリカン」、「ヘッジトリマー」、「プルーナ」の4種類のアタッチメントを付け替えできる。同シリーズ共通の特徴は、(1)50ボルトハイパワーバッテリー=ECHOオリジナルのハイパワーバッテリーを搭載。高出力モーターをスマートCPUで制御することで、エンジンタイプレベルの粘り強さを発揮(2)アタッチメントの脱着=各アタッチメントの脱着は簡単に素早く行え、車への積み込みや保管時に便利(3)好バランス設計=モーター・バッテリーの重心をドライブシャフト軸上に置くことでバランスに優れ、足場の悪い傾斜地でも安定した作業が行える(4)3段階の回転速度=回転速度の調整は3段階に設定することができ、プラス・マイナスのボタンで直感的な操作が可能。

 
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  電源システムを初納入/やまびこ  
     
   (株)やまびこ(久保浩社長)は、次世代電源供給システム「マルチハイブリッドシステム」を世界で初めて岩手県滝沢市に納入した。災害時、平常時ともに価値を発揮し、脱炭素化に貢献する同システム。同市の武田哲市長は、地元企業の技術力に敬意を表し、今後の様々な稼働メリットに期待した。
 
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  高い購買意欲継続/日農工部会長がみる2026年農機需要見通し  
     
   一般社団法人日本農業機械工業会(増田長盛会長)の機種別部会長から寄せられた年頭所感から、令和8年の農機需要見通しをみる。
 〈トラクタ〉
 2026年のトラクタ市場の見通しは、個人農家向けの小型クラスは減少傾向が続くと予想されるものの、25年産米の米価上昇による収入増から、担い手農家の投資意欲は維持すると見込んでいる。特にスマート農業技術の導入率は年々高まっており、自動操舵やロボット農機、乾田直播の普及が進むことで、農業現場の生産性向上と省力化が一層期待される。
 一方で、記録的な猛暑や渇水などの異常気象リスクは今後も続くと見込まれ、作物の品質や収量への影響が懸念される。高温耐性品種の導入やスマート農機の活用によるリスク分散が重要となり、資材費や原材料価格の高止まりも引き続き注視が必要。農政面では、みどりの食料システム戦略を基本とした環境負荷低減や、スマート農業技術活用促進法などの施策により、農機の大型化やスマート農機の導入は更に進むと見込まれる。以上のような状況から、2026年のトラクタ全体の需要は、2025年比99%を見込んでいる。
 〈管理機〉
 今年の市場は、農家向けは高齢化と後継者不足の懸念がある半面、農業収益が安定した農家からの需要が下支えすると期待している。一般消費者向けは、物価の上昇を背景に消費者心理の悪化が懸念されるが、ホームセンターでの販売が市場を後押しすると見ている。このような状況を踏まえ、令和8年の需要見通しは令和7年比98%と見込んでいる。
 市場環境は引き続き厳しい中ではあるが、管理機部会として日本製品が誇る高品質や高耐久、さらに地球環境及び安全面に配慮した製品を提供し日本の農業および業界の発展に貢献したい。
 〈田植機〉
 田植機市場においては、残念ながら農家戸数の減少には歯止めがかかっていないが、米価の上昇により農家の購買意欲が喚起されたことに加えて、社会全体がインフレ基調へと転換する中で各社、苦渋の価格改定に踏み切ったことにより生じた駆け込みが需要を底上げして活況を呈し、令和7年の需要見通しを前年比112%と見込んでいる。
 今後の米価の動向や農業政策に注視が必要ではあるが、本年は昨年の米価上昇による農家の投資意欲向上のもと、様々な農政の力強い後押しを受けて、省力化や環境負荷低減に資するスマート田植機のますますの普及が期待される。
 一方で、小型クラスを中心に高齢化や離農、価格改定需要の反動減も予想され、また急速に注目が高まっている直播の普及も注視する必要があり、令和8年の需要見通しについては対前年比94%と予測した。
 農機市場のみならず社会全般の産業構造や経済動向が大きく変化する変革期を迎え、エネルギーや環境配慮など対応すべき課題が山積しているが、このような時代において、改めて食料安全保障の重要性から農業に対する注目と期待がますます高まっている。
 〈収穫機〉
 本年の需要見通しは、高市政権発足に伴う農業政策の転換に注視が必要。また、米価高騰に伴う米離れ、米余りの動向を懸念しているところ。大型クラスは、スマート農機への関心の高まり等の要因から、今後も担い手層の投資意欲向上に期待している。
 一方、小型クラスは、米価上昇のプラス要因はあるものの、小規模農家の離農等により2、3条クラスを中心に前年を下回ると見込んでいる。
 米価の動向によらず、担い手農家への農地集約が加速している現状では、農作業の省力化・省人化を目指した、スマート農業関連商品の導入が更に進んでいくと思われる。スマート農機単体での活用のみならず、自動操舵では作業軌跡の他機種への連携による作業省力化や、営農情報の活用による圃場管理、メンテナンスへの情報活用など、農作業トータルでの利便性向上の提案を目指していく。
 〈作業機〉
 本年の見通しとしては、米価の動向には注視が必要だが、水田関連機械や草刈機関連の需要は引き続き堅調に推移するとみている。全体としては、小型クラスの需要は減少傾向が続く一方、省力化につながる大型クラスは堅調に推移すると考えている。以上のことから、今年は対前年比108%と予測した。
 〈乾燥機〉
 大規模農家層を中心に設備更新の需要は堅調に推移すると見ている。一方で、小・中規模農家では減少傾向が予想される。また、減産体制が続いてきたため、需要に対して供給が追いつかない状況は続くと見ている。米価の安定は好材料だが、資材費や人件費の上昇に加え、今後の農業政策や輸入米の動向などにも注視が必要と見ている。以上のような状況から令和8年の需要見通しは、対前年比100%と見込んでいる。

 
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  農機業界活性化へ/団体 年頭所感  
     
   2026年の幕が開いた。新しい農業基本計画が始動する今年は、計画達成に向けてスマート農業技術のさらなる活用とともに生産性向上を目指す年になりそうだ。関係団体の代表者の方々に、新年の抱負などを寄せていただいた。
 
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  令和8年度は勝負の年に/日本農業機械化協会会長・菱沼義久氏インタビュー  
     
   農業機械化が以前にも増して重要性を増している。昨年11月に公表された2025年農林業センサスではこの5年で23%もの農業経営体が減少した事実が示された。農業人口が急減していく中で、日本農業を維持し、持続的に発展させていくために、農業の機械化、とりわけスマート農業の普及が解決策の1つとして期待が高まっている。変わりゆく農業情勢の下で、我々はいかに農業機械化を進めていけば良いのだろうか。農業機械化を推進する日本農業機械化協会の菱沼義久会長に、新年を迎えるにあたってのインタビューを実施した。
 
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  全農農機事業の方向:共同コンバインの動き好調/名取伸治農機専任部長に聞く  
     
   米価上昇を受けて活性化した昨年の国内農機市場。その勢いをできるだけ長く持続したいところだが、確たる先行きはない。市場変化に対応し、安定した事業基盤を築くための手立ては不断に推進していかなくてはならない。年頭に当たり、今年の市場展望および全農農機事業のポイントについて、名取伸治農機専任部長に聞いた。
 
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  保有面積大規模層増える/2025年センサスにみる森林・林業  
     
   昨年11月28日に農林水産省から公表された「2025年農林業センサス」からみて日本の森林・林業の現状や変化はどのようになっているのだろうか。令和7年2月1日現在の調査結果をとりまとめたセンサスから読み取れることはなんだろうか。我が国は世界有数の森林国として名を連ねているが、林業経営体の動向では保有山林面積が大きい層が増加し、零細規模の割合は僅かではあるが減少傾向、林野面積は総土地面積に占める林野面積の割合(林野率)が66・3%を占め、若干の上下動こそあるものの横ばいで推移していることなどが分かった。センサスの調査結果から現状をクローズアップしてみた。水源涵養や国土保全、木材生産など様々な機能、役割を有する森林を活かすためにも、持続性を持たせた取り組み、対応などが問われている。
 昨年11月28日に公表された「2025年農林業センサス結果の概要」によると、令和7年2月1日現在の林業経営体のうち、個人経営体は約1万8000、団体経営体は約5000で合わせて2万3000経営体となり、5年前に比べ、個人が約1万経営体、団体が約1000経営体それぞれ減っており、増減率にすると個人が36・2%、団体が17・9%減少。林業経営体としても5年前の3万4000経営体から32・9%減と大幅に減っている。この結果、林業経営体は、平成27年の8万7000経営体、令和2年の3万4000経営体からの減少傾向に歯止めがかかっていない。
 しかし団体経営体に占める法人経営体の割合をみると、平成27年58・4%、令和2年65・8%から今回72・4%となり、前回調査から6・6ポイント上昇した。経営体の法人化の流れが出てきている。
 法人化している林業経営体の内訳では、農事組合法人61(法人化している経営体の中での構成比=1・7%)、会社組織は、株式会社、合名・合資会社、合同会社合わせて1976(同53・4%)、各種団体(農協、森林組合、その他各種の団体)は、1225(同33・1%)、その他の法人438(同11・8%)となっており、会社と森林組合とが林業経営体の中核を成している。会社のうち株式会社は1862経営体で最多、森林組合は1075経営体となっている。
 一方、保有山林面積規模別にみた令和7年の林業経営体数の構成割合をみると、5ヘクタール未満23・1%、次いで5〜10ヘクタール未満22・0%、10〜20ヘクタール未満19・9%となっており、この3階層で65・0%とほぼ3分の2を占める中、ここにきての傾向として保有山林面積10ヘクタール以上ある林業経営体は全体の55%と5年前に比べて1・9ポイント上昇している。
 特に30〜50ヘクタール未満8・5%、50〜100ヘクタール未満6・6%、100ヘクタール以上10・9%となり、いずれも前回調査からアップ。経営体の規模拡大が進んでいることが分かった。

 
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  遠隔操作化が前進/これからの機械化対応  
     
   構造変化する林業経営体の要請に応えて機械化対応も着実な前進をみている。昨年の4月に林野庁がまとめ、示した「林業機械の遠隔操作に関する安全性確保ガイドライン〜Ver.1・0〜」もこの先をにらんでの対応といえる。
 「近年、林業の安全性及び生産性の向上を目指して、林業機械の遠隔操作技術及び自動運転技術の開発が進展している」と書き出したガイドラインは、「このうち遠隔操作林業機械は実用化段階にあり、自動運転林業機械は開発・実証段階にある。これらの新しい技術の導入により、林業従事者を危険なエリアから遠ざけることができるため、安全性の向上を期待することができる。一方で、これまで林業現場には導入されていない新たな技術であることから、これまでにない新たなリスクが生じる可能性がある」と基本的な考え方を示して、新たなリスクを回避・軽減する目的で策定している。
 このように林業機械の開発や対応のあり方など、遠隔操作や自動化に向けて歩を進めている。こうした新技術は、昨年10月の宮城県石巻市での「みやぎ2025森林・林業・環境機械展示実演会」会場でも目玉機種、主要製品として展示、実演されている。
 これから、遠隔操作など最新技術を採り入れた林業機械が普通に稼働し、現場の作業のあり方を変えていく時代になっている。特に国の事業での機械開発事業の課題は全て遠隔操作か自動化に関するものばかりだ。
 最近の各種高性能な先進的林業機械は、作業の省力・合理化はもとより、労働安全衛生面での向上、重筋労働からの解放・負担軽減、さらには事業体として新規就労者に対するアピールやイメージアップなど、様々な役割を果たしているが、現場の作業には今や必要不可欠。このため、機械化対応は前向きなスタンスが取られている。
 林野庁が進めた現場実装の推進、検証の事業でも機械化の新たな対応のあり方が図られており、ICT機能搭載のハーベスタ、AI機能搭載の架線系など先進機械が登場して、課題や可能性等が示されている。ソフトとハードとがあいまって新たなフェーズに入ろうとしている。

 
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  木材の可能性広げる都市部の中高層ビル/都市の木造化を推進  
     
   この先のトレンドとして、木材をふんだんに駆使した中高層ビルディングが都市部でも占める割合を伸ばしていきそうだ。マンション、ホテルはもちろん、社屋に至るまで、その活用は今後さらに広がっていくと見られる。コンクリートと鉄筋のビルディング街から、木造高層ビル群へのシフトチェンジ。木材の新たな需要先でもある「非住宅分野」として着々と根を張りつつある。
 なぜ、注目されるのか。1つには現在進行中の地球温暖化への対策と密接な関わりを持っている。政府が2050年にカーボンニュートラルの実現を目指した政策を示しており、「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」の施行を経て「森林(もり)を活かす都市(まち)づくり」が本格始動している。
 平成22(2010)年制定の「公共建築物等木材利用促進法」を改正した同法「通称・都市(まち)の木造化推進法」の登場によって、改めて、製造・加工時のエネルギー消費が鉄やコンクリート等の建築資材よりも比較的少なく、建築に係る二酸化炭素の排出削減に貢献する木材がクローズアップされてきた。
 しかも技術的に燃えやすい、腐りやすいという木材が抱える負のイメージを払拭するような木質耐火部材や新たな接合方法の開発が進展し、この先の展開を支えるようになっている。
 この結果、例えば令和5年度の「森林・林業白書」では、中高層建築物、低層非住宅建築物、内装木質化に分けて写真入りで木材利用の事例を紹介するまでになっている。野村不動産溜池山王ビル、水戸市民会館、岡山大学共有共創コモンズなどを載せて、木造化、木質化に取り組む例が増えつつある現状をアピールしている。

 
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  林業・木材産業事業者の課題は人材育成・確保/日本政策金融公庫が調査  
     
   経営発展に向けて取り組みたい課題は「人材の確保と育成」だと林業及び木材産業事業者の多くが考えている―これは(株)日本政策金融公庫(東京都千代田区大手町)が昨年12月18日に公表した「林業・木材産業事業者向け調査」で明らかになったもの。アンケートとして実施した同調査では、景況や後継者の確保、再造林への取り組みなどについて尋ねた。
 景況では、素材生産業の令和7年度見通しの景況DIは6・5となり、令和6年度実績(3・0)からプラス幅が拡大している。
 また、素材生産業者の今後取り組みたい課題では、「人材確保・育成」に次いで、「作業の合理化・省力化」だった。再造林を行うにあたっては、素材生産業者では「主伐の収入で、主伐又は再造林費用をまかなえない」の回答割合が最も高かった。

 
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  林業の循環利用へイノベーション進める/林野庁長官・小坂善太郎氏インタビュー  
     
   戦後に造成された人工林が本格的な利用期を迎えている。「伐って、使って、植えて、育てる」循環の確立に向けて、各方面で様々な取り組みが進んでいる。現行の「森林・林業基本計画」には、林業・木材産業の成長産業化に取り組むことによって2050年カーボンニュートラルに寄与する「グリーン成長」の実現を掲げた。基本計画は5年に1度、見直しており、今年は更新年にあたる。現在、内容の検討を進めているところだ。今回は新春インタビューとして林野庁の小坂善太郎長官に登場願い、「林業イノベーション」を主要テーマに、林業の機械化の取り組みや課題、今後の方針などについて話を聞いた。
 
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  最新の技術で現場支える/林業各社 年頭所感  
     
   国土の3分の2を占める森林、そして日常生活に欠かせない潤いのある空間である緑地を管理していく上で、年々重要性を増している各種管理、作業用機器。いまや必要不可欠な存在となっているが、機械の供給サイドはどのようなスタンス、思いでユーザーの期待に応え、作業を、そして現場を支えていこうとしているだろうか。2026年の年頭に当たってトップの思い、所感を綴ってもらった。
 
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  スマート農機駆使し、持続的農業を実現/新春特別企画・普及が期待される農業サービス事業体  
     
   農家の高齢化、離農が加速化するなか、我が国の食料安全保障確保のために農業生産力をどのように維持し持続的農業を実現するかが喫緊の課題となっている。対応策として近年、進んでいるのがスマート農業の社会実装の取り組みだが、スマート農機の有効活用や導入コストなど普及へのハードルがなお高いのも事実。そこで注目されているのが農業サービス事業体。スマート農機、ドローンなどを駆使し、作業を請け負い、低コスト化を図るのが狙いだ。本格的な産業化向けに取り組みが進んでいるサービス事業体の話題を特集した。
 
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  農林水産省が導入サポート緊急対策/新春特別企画・普及が期待される農業サービス事業体  
     
   農林水産省の令和7年度補正予算では「スマート農業・農業支援サービス事業導入総合サポート緊急対策」に156億5800万円を計上し、農業サービス事業の普及に力を入れる。
 農業者の高齢化・減少が進む中において、労働生産性の高い農業構造への転換に向けて、農業支援サービス事業者の育成や活動の促進、スマート農業技術の現場導入とその効果を高める栽培体系への抜本的な転換等の取り組みを総合的に支援。スマート農業技術の活用割合を50%以上に向上(令和12年度まで)させる。
 1 スマート農業・農業支援サービス事業加速化総合対策事業
 (1)スマート農業技術と産地の橋渡し支援=スマート農業技術を他品目等にカスタマイズするための改良を支援する。(補助上限額:500万円)
 (2)農業支援サービスの育成加速化支援=サービス事業の立上げや事業拡大に向けたニーズ調査、サービス提供の試行・改良、サービスの提供に必要なスマート農業機械等の導入、サービス事業者の事業性向上に資する流通販売体系の転換等に必要な施設整備等を一体的に支援する。(補助上限額(農業機械)1500万円、3000万円、5000万円)
 (3)農業支援サービスの土台づくり支援=サービスの標準的な作業工程や作業精度等を定めた「標準サービス」の策定等を支援する。
 2 スマート技術体系への包括的転換加速化総合対策事業
 (1)スマート技術体系転換加速化支援=スマート農業技術を活用し、農業機械の導入とその効果を高める栽培体系への転換等を行う産地の取り組みを支援する。
 (2)全国推進事業=スマート農業技術を活用した先進的な取り組みの横展開を図るため、実証展示圃場の設置やシンポジウムの開催等を支援する。
 スマート技術体系転換加速化支援の例としては、自動操舵システム+直播栽培による作期分散(水稲)、自動追従システム+省力樹形・園地整備による栽培管理の効率化(果樹・茶)、AI選別+大型機械による一斉収穫・選別(畑作物)、高温障害の影響を低減する生育予測システム+機械による一斉収穫(露地野菜)などがあげられている。
 また、令和8年度(当初)予算概算要求額は9億8000万円となっている。

 
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  農作業を受託・代行する農業支援サービス/新春特別企画・普及が期待される農業サービス事業体  
     
   農業支援サービスとは、農業現場における作業代行やスマート農業技術の有効活用による生産性向上支援等、農業者に対してサービスを提供することで対価を得る業種のことをいい、データ分析やドローン散布等の作業受託、農業機械のシェアリング、農業現場への人材供給等、農業者を支援するサービスのこと。
 生産現場における人手不足や生産性向上等の課題に対応し、農業者が営農活動の外部委託など様々なサービスを活用することで経営の継続や効率化を図ることができるよう、「農業支援サービス」の定着が推進されている。
 〈スマート農業技術活用サービスの例〉
 専門作業受注型=播種や防除、収穫などの農作業を受託し、農業者の作業の負担を軽減するサービス。ドローンを活用した農薬散布作業代行や、水稲や畑作物における、土づくり、播種から収穫までの各種作業を代行するなど。
 機械設備供給型=機械・機具のリース・レンタル、シェアリングにより、農業者の機械設備導入コスト低減を図るサービス。
 自社で開発した自動収穫ロボットのレンタルサービスや、ラジコンヘリ等を活用した防除作業受託、ドローンを共同で利用する農業者向けのシェアリングサービスの提供など。
 人材供給型=作業者を必要とする農業現場のために、人材派遣等を行うサービス。各地の繁忙期に着目して社員を専門的に育成・派遣。労働力を要する農業者と適した作業者のマッチングが可能な農業用求人システムの開発など。
 データ分析型=農業関連データを分析して決策を提案するサービス。生産や市況などのデータを分析し、最適な出荷時期などの提案により農業経営をサポートする。施設園芸における生産性改善に向けた労務管理システムの開発・提供など。
 複合サポート型(上記4類型の複合型)=センシングに基づく農薬ピンポイント散布等の栽培管理ソリューションを無償で農家が活用。その生産物を農家から買取り、販売するなど。

 
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  農林水産航空・農業支援サービス協会が設立/新春特別企画・普及が期待される農業サービス事業体  
     
   農業支援サービス事業者の支援等を行う「一般社団法人農林水産航空・農業支援サービス協会」(福盛田共義会長、農サ協会)の設立式典が昨年10月20日、東京・平河町のJA共済ビルカンファレンスホールで開かれた。開会のあいさつに立った福盛田会長は「設立の目的は農業者やJA、防除実施主体等が安心して農作業を委託できるよう、品質レベルの高いプロのサービス事業者を育成し、農業者が減少する中、営農を継続し、耕作放棄地の発生を防止し、農業生産の安定に貢献すること」と設立の趣旨を述べ、農業サービス事業の産業化に意欲を示した。
 農林水産省からは、「スマート農業を核とした新技術を通じて生産性の向上を図ることを構造転換の重要なポイントと位置づけている。その際、新たな機械の導入コストや専門知識の習得の必要性を踏まえると、農業支援サービスを通じて農業経営に取り組むことが大変有効である。今回の協会設立は、時宜をえたもの」と今後の活動に期待が寄せられた。
 式典終了後は、参加者らによる交流会が行われ、宮下一郎元農林水産大臣、山口靖農産局長らが祝辞を述べた。JA全農耕種資材部の秋森吉樹次長が乾杯の音頭をとり、ヤンマーヘリ&アグリ(株)の樋口広樹社長が中締めを行った。

 
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  期待高まる新たな施設園芸/施設園芸特集  
     
   施設園芸は国内の園芸作物における周年安定供給に必須の栽培技術である。気象災害の激甚化・頻発化が進んでいる中で、自然災害に左右されない、安定した食料生産が強く求められており、その対策の1つとして、施設園芸に期待が寄せられている。一方で施設園芸をめぐる情勢は厳しさを増し、高止まりする燃料・資機材価格をはじめ、施設園芸農家の高齢化と減少、施設設置面積の減少など課題が山積。また、みどりの食料システム戦略において、2050年までにゼロエミッション化、2030年までにハイブリッド型園芸施設等の割合を50%にする目標が掲げられており、対策が待ったなしとなっている。政府の施策など関連する話題を集めた。
 
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  新技術でデータ駆動型施設へ/施設園芸特集  
     
   昨年の夏は3年連続で記録的な猛暑となり、全国各地で40度C超えの最高気温が観測された。もはや猛暑は毎年恒例となりつつあり、自然災害に左右されない、安定した食料生産が強く求められており、その課題解決策の1つとして施設園芸に期待が寄せられている。
 昨年10月に発足した高市政権においては、安定的な生産力の確保を推進するべく、新たなテクノロジーを活用した完全閉鎖型植物工場への投資拡大を進める旨が示された。鈴木憲和農林水産大臣は10月の大臣就任記者会見にて「(植物工場で活用される)日本の空調技術は世界のトップランナーを誇る。こうした新たなテクノロジーが日本の稼ぐ力を高め、世界のスタンダードとなる食の未来を作っていきたい」と述べ、施設園芸の展開推進を示している。
 政府は今年、施設園芸関連でどのような施策を進めていくつもりなのだろうか。施設園芸関係における令和8年度予算概算要求ならびに令和7年度補正予算の一部をみると、8年度予算ではみどりの食料システム戦略推進交付金のうち省エネルギー型ハウス転換事業に39億1100万円の内数(前年度6億1200万円)を充当。地域の関係者が集まった協議会等が行う、再生可能エネルギーの活用促進のための賦存量調査や、省エネルギーと生産性を両立する持続的な栽培体系への転換に向けた実証や産地内への普及の取り組みを支援する。また、データ駆動型農業の実践・展開支援事業に1億7100万円(前年度同額)をあて、データ駆動型農業の実践体制づくり支援やスマートグリーンハウス展開推進を進める。その他、養蜂等振興強化推進、農畜産業プラスチック対策強化事業、農業生産におけるプラスチック排出抑制対策事業等を推進する。
 7年度補正予算では、施設園芸関係では施設園芸等燃料価格高騰対策(44億円)、園芸産地における事業継続強化対策(1億9400万円)、みどりの食料システム戦略緊急対策交付金のうち省エネルギー型ハウス転換事業(40億円の内数)、農業生産におけるプラスチック排出抑制対策事業(40億円の内数)、産地生産基盤パワーアップ事業(80億円)、スマート農業・農業支援サービス事業導入総合サポート緊急対策(156億5800万円)などを活用して施設園芸の振興を進めていく予定となっている。
 一方、施設園芸全体の情勢をみると、ガラス温室やハウスなどの園芸用施設の設置面積は1999年をピークに減少傾向にあり、2023年は、野菜2万7281ヘクタール、花き5195ヘクタール、果樹4518ヘクタールの計3万7000ヘクタールとなった。また、2022年の状況では設置面積3万7907ヘクタールのうち、ボイラー等の加温設備を備えた温室は1万6676ヘクタール(全体の44・0%)、うち炭酸ガス発生装置のある温室は2153ヘクタール(5・7%)、養液栽培施設のある温室は1505ヘクタール(4・0%)、複合環境制御装置を備えた温室は1302ヘクタール(3・4%)に留まり、さらに完全人工光型植物工場は22ヘクタールだった。今後も環境制御装置を導入した温室の割合を高め、生産性向上が重要になる。
 また、一般社団法人日本施設園芸協会は令和7年度より5年先、10年先の日本における施設園芸の将来像を描く「施設園芸の将来像に係る懇談会」事業を始動。これは有識者による懇談会にて現状の施設園芸農家が目指す方向を明確化するもので、具体的には経営規模別に主な作物別の収益(収量)、装備すべきハウス(ゼロエミッション・セミクローズハウスにおける構造、資材など)、環境制御・栽培システム、活用すべきエネルギー、販売流通の方向性を示すとしており、今年2月には提言取りまとめを行う予定。
 また、日本施設園芸協会は今年7月15〜17の3日間、都内有明の東京ビッグサイト南1・2ホールにおいて、施設園芸・植物工場展2026(GPEC)を開催する。同展は隔年で実施され、9回目の今回は「技術を極め、未来を耕す、革新の施設園芸」をテーマに、新しい技術やサービスなどが勢ぞろいする。新企画として技術表彰制度「GPECアグリイノベーションアワード」も開催予定。今年は同協会の懇談会やGPECで提案される新しい施設園芸に要注目である。

 
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  農研機構:日本施設をアジア展開/施設園芸特集  
     
   農研機構野菜花き研究部門(東出忠桐所長)は昨年12月19日、都内中央区のTKPガーデンシティPREMIUM京橋ANNEXホールCにて、令和7年度農研機構つくば植物工場シンポジウムを開催した。「施設園芸のアジア展開のための技術開発戦略」をテーマに、日本の高度な施設園芸をアジア地域へ展開するための技術開発およびビジネス戦略について話題提供と議論を行った。
 東出所長は「施設園芸の発展と東南アジア展開のための技術開発戦略2025」を講演。高品質野菜需要と自国内生産の要求が高まっているASEAN地域に、高品質生産の強みをもつ日本式施設園芸を展開するため、内閣府事業で有識者による「技術開発戦略策定検討会」を設置しASEAN調査を行い、トマト・イチゴの生育シミュレーションにより地域ごとの障害リスク及び最大収量を解析。その結果、多くの地域は月平均気温25〜30度Cと高温で栽培に不適で高温障害リスクが高いものの、日射量は通年で安定しており、極めて効果の高い高温対策を行えば高収量が可能と示された。また、気象的好適地はすでにオランダや韓国などが大規模かつ高度な施設を展開しており、日本は大規模施設に加えて中小規模の簡易施設への技術展開が有望と指摘。既存施設を活用しつつ品種に応じた環境制御や省エネ技術を推進する品種・ハード・ソフトのパッケージ展開を進める筋道を示し、それには日本のチーム体制による資材供給・技術支援が重要になるなどと語った。

 
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  麦1t超え、5年輪作で豆、馬鈴薯も/農家ルポ・武智農場(北海道池田町)  
     
   農業の基本は土づくり。誰しもが認めるこの取り組みを徹底し、異常な推移をみせる気象下でも地域の平均を超える確かな収量を確保し続ける武智農場(武智唯浩代表・北海道中川郡池田町)を訪ねた。同農場では、植物の生長を支え、かつ自身の労働負荷軽減にもつながる特注プラウを活用するなど、土層・土壌の改善に毎年熱いエネルギーを注いでいる。
 十勝ワインの里として知られる池田町。主要作物は小麦、豆類、てん菜、バレイショ、デントコーン、牧草などで、平均的な経営耕地面積は36ヘクタール、徐々に拡大が進み、大規模層の割合も増えている。こうした中、武智農場の営農面積は約51ヘクタール。作付けは小麦20ヘクタール、大豆、小豆、バレイショが各10ヘクタール。これらを小麦↓小麦↓大豆↓小豆↓バレイショの順に5年輪作とし、小麦と小麦の間に堆肥を施用、また、小麦と大豆の間に緑肥を鋤き込み地力維持を図っている。以前は4年輪作としていたが、小豆の土壌病害・落葉病を回避するため5年に変更し、それから病害は発生していないという。
 就農以来、およそ53年が経過、この間に父君の時代よりも2倍の作付面積になり、「周囲で後継者がいないなどの事情があり、面積増につながった」とのこと。てん菜収穫時などの臨時雇用はあったものの、基本的には家族労働で賄える規模と機械化体系を志向し、てん菜からバレイショに転換したのも人手不足や肥料などの経費増が主因だ。「人手の手配が厳しくなり、(100キロ近い距離がある)釧路からみえる場合もある。雨で作業ができなくなったから、労賃は支払わない…、というわけにはいかないですからね」と、人を雇い入れる難しさは年々高進している。
 武智氏は、スガノ農機(本社=茨城県稲敷郡美浦村)との付き合いの中で土づくりの重要性を認識」し、造詣を深めたと話す。北海道土を考える会が2022年11月に十勝エリアで実施した土壌断面調査勉強会では同農場が対象となり、プラウとプラソイラの併用で実現した深い作土層、暗渠施工による排水改良、深耕による作土深の拡大、緑肥栽培による有機物供給で構成が変化した土層などの指摘が研究者よりなされ、武智氏の長年の努力が「見える化」された。実際の断面構造(モノリス)は、同家の仏間に飾られており、農作物を支える見えざる勲章の趣がある。
 同氏の理想は特注のプラウにも反映され、スガノ農機と協議を重ねた結果、「丘曳きR204FPA1 22インチ×4連」に結実した。(1)22インチ×4連で作土層を拡大(2)耕深40センチまで深く起こしたい(3)踏圧軽減、調整簡単、作業姿勢が水平な丘曳きタイプ(4)全てのボトムにコールタとジョインタを装備(5)残耕を残さない油圧オフセット―などのニーズに応じ、同機には耕深調整が楽なゲージホイル、丘曳きフルコールタを実現した先行コールタ、新形状ジョインタ、油圧オフセット機構などが盛り込まれた。加えて、「プラソイラ7QS5MSSS2 5本爪」(最大作業深75センチ)により、40センチより下の土層(40〜60センチ)まで少しずつ作土層を増やしていく作業を進めている。
 「作物は根が生命だから、根が好ましい状態を追求すれば自ずと作物は育つ」(武智氏)。その結果、同氏は2024年産秋播き小麦で10アール当たり960キロの収量(十勝地区平均の1・5倍以上)を上げ、過去には1トン超えを記録した年もあって、まさに「基本は土づくり」の精神が生み出した大きな稔りである。
 「スガノに教わったことが実際こうなっている」と同氏。10年前に子息の宣仁氏が就農し、営農の主役は代替わりしているものの、「土づくり」に込める精魂に変わりはない。地域では最も早く自動操舵システムを導入し、自ら基地局まで立てる積極さをみせる。機械の選択は営農の目的や作業条件に適う製品に重きを置き、ゆえに銘柄は様々で、機械好きながら技術への評価はシビアだ。
 土にこだわり土を活かす―機械化の根底にもあるその思想が、明日の収穫を約束する。
 ちなみにスガノ農機は昨年12月、HPに同農場と特注プラウの動画をアップした。

 
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  農業現場の機械化意識:購入意欲さらに向上/秋田展アンケートから  
     
   農機の秋商戦を締める一方で、次の春商戦に向けての手応え、ユーザーの購買意欲を探る場として大きな役割を果たしている秋田県農業機械化ショー(主催=秋田県農業機械化協会・白石光弘会長)。第77回を迎えた昨年の農業機械化ショーは、10月31日から11月4日までの5日間、湯沢市の松ノ木河川公園で行われた。同展で毎年実施している農家アンケートを今回も前年に引き続いて、計27項目を設けて実施し、526名(前回500名)から回答を得た。農業機械投資への考え方、販売店・JAへ期待すること、中古査定士の認知度など現場への思い、農作業安全についての調査、スマート農業についてなど従来と同様の質問に加え、今回初めて、乾田直播や生産物の販売先について聞いた。昨年から続く米価の高値維持に加え、秋田県は天候に恵まれて昨年産米の作況指数も103と良好で、アンケートからは購買意欲向上の結果が得られた。
 アンケート結果を見ていく。
 農機の購買意欲について「近いうちに農機購入の予定はあるか」との質問に対して「ある」との回答が36・5%(前回32・8%)と、さらなる購買意欲の高まりを見せた。一方、「ない」との答えは41・3%(同46・2%)、無回答は22・2%(同21・0%)だった。「農機の更新や導入についてどう考えるか」との問いに対しては、「良い機械があれば積極的に導入」が44・1%(前回43・0%)、「手持ちの機械で間に合わせる」23・2%(同22・8%)、「中古で間に合わせる」16・0%(同17・4%)、「集落営農に伴い共同所有」6・8%(同7・4%)、「リース・レンタル」4・8%(同3・6%)「作業は委託する」4・8%(同3・4%)、「海外の廉価機械も検討」1・7%(同0・4%)、無回答6・7%(同6・6%)。「購入予定あり」は36・5%であったが、「良い機械への積極導入」が44・1%との結果から、購入の予定はないとしながらも、潜在的な購入意欲は内在していることがうかがえた。具体的な購入予定機械の票数は記入数106(前回81)で、そのうちトラクタ29(同21)、コンバイン25(同22)、田植機12(同8)、乾燥機9(同5)、ドローン5(同3)、草刈機4(同3)、モア3(同2)など主要機が中心。また、昨年よりも具体的な機械の記入数が増え、購入予定機械がより明確な来場者が増えていることが見て取れた。
 「今後も営農を続けるか」の問いでは、「10年以上継続」47・9%(同55・0%)、「5年以上」17・7%(同17・2%)、「5〜10年」15・4%(同12・4%)、「間もなくやめる・委託」9・9%(同7・6%)、無回答9・1%(同7・8%)。「5〜10年継続」が3・0ポイント上昇したものの、高齢化のためか、「10年以上継続」は7・1ポイント減少する結果となった。
 「機械導入の際、何を基準にするか」の問いには、「メーカー(ブランド)」48・1%(同46・8%)、「価格」23・0%(同23・2%)、「ディーラー・JA」17・1%(同15・8%)、「下取り条件」8・4%(同7・8%)「公的資金の斡旋」3・2%(同3・6%)、「長期ローン設定」2・3%(同2・4%)と続き、慣れ親しんだメーカーを使い続ける傾向。「農機販売店・JA(農機購買)に何を望むか」の質問では、「修理・サービスの充実」55・3%(同55・8%)、「品揃え、関連商品の充実」28・9%(同28・6%)、「営農情報の提供」12・4%(同12・8%)、「公的資金申請書類の作成・指導」6・1%(同6・6%)、「イベントの紹介」5・5%(同4・0%)、「作業受委託の斡旋」3・2%(同3・8%)、「農産物の販売先紹介」2・5%(1・8%)となり、修理・整備などアフターサービス面の拡充に期待する声が根強かった。
 「スマート農業について」は、「興味がある」58・9%(同61・6%)、「興味はないが知っている」17・5%(同16・0%)、「導入を検討している」8・7%(同8・0%)「実際に使っている」5・9%(同5・6%)、「知らない」3・6%(同6・0%)、無回答5・9%(同2・8%)と、7割以上が興味関心を示している。実際に使用している、もしくは導入意志がある農家は、合わせて15%ほど(前回13・6%、前々回10・4%)で、現場使用の割合は着実に増えている。興味を示した回答者に対して尋ねた「興味ある、もしくは使用している技術」(複数回答)の回答率は前回から大きく増加。スマート農業技術への期待が深まっている。
 中でも「ドローン」41・1%(同40・6%)、「自動操舵ガイダンス」21・7%(同16・4%)、「水管理システム」9・9%(同6・0%)、「直進キープ機能付き農機」8・8%(同9・6%)、「営農支援システム」7・8%(同10・2%)、「可変施肥」7・2%(同4・4%)、「ロボット」6・1%(同4・0%)、「リモートセンシング」3・2%(同2・6%)と、ドローンへの関心の高さが際立つ。また、自動操舵や直進機能付き農機を合わせて30・5%(前回26・0%)と運転省力化技術への関心も依然高い。
 「農業経営を行う上での情報入手先」は「人から」78・1%(同80・0%)、「媒体から」35・2%(同45・4%)、無回答11・6%(同10・0%)。主な情報は人から入手していることがわかる。また、「人から」と回答したうち、「JA」75・4%(同50・4%)、「メーカー担当者」24・6%(同22・6%)、「普及員」10・9%(同7・6%)。「媒体から」との回答の中では「新聞」37・3%(同24・8%)、「TV」31・9%(同21・0%)、「動画」25・4%(同5・8%)、「雑誌」20・0%(同12・8%)、「SNS」17・3%(同6・0%)、「検索」13・0%(同3・2%)、「その他」5・9%(同2・2%)。インターネットを介した情報収集も急伸している。
 今回初めて集計した「乾田直播について」は、「興味あり」44・1%、「興味はないが知っている」31・7%、「知らない」9・3%、「導入を検討中」4・6%、「実際に使用している」2・9%、無回答7・8%。51・6%が興味関心を示しているものの、実際に使用している、もしくは検討中の割合は7・5%ほど。まだまだ伸び代のある技術だと言える。一方で新たな機械投資が必要なケースも多く、今後の動向を注視したいところだ。
 「生産物の販売先」については、「JA」72・4%、「直売所」14・4%、「ネット販売」4・9%、「スーパー、レストランなど直接取引」4・0%、「その他」9・3%となった。
 アンケート結果の詳細は後日、無料Webサービス「note」の当社ページ(https://note.com/noukei/n/n4e2f0a93040d?app_launch=false)にて掲載予定。

 
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  米価の動向を注視/本紙販売店アンケートから  
     
   本紙では毎年、販売店の売上げ動向や経営重点対策などを調査するため、全国の農機販売店を対象に、往復ハガキとWebによるアンケート調査を行っている。昨年11月末に実施したアンケートでは、北海道から沖縄まで、全国の農機販売店200社に協力を依頼した。令和7年の農機市場は、米価上昇などの追い風を受け、担い手農家を中心に購買意欲が向上。農機の供給が需要に追いつかなくなるほどの好況を呈した。このような動きは、今回の回答結果にどう影響したのか。ここでは、本紙が実施した販売店アンケート調査から、令和7年の農機市場を概観し、令和8年の市場動向を展望する。
 令和8年の売上げ見通しについては、1〜12月通年での売上げが前年よりも「増加」すると予測した販売店は13・6%(前年比18・4ポイント減)、「横ばい」は22・7%(同16・3ポイント減)と、いずれも大きく減っている。その一方、「減少」は50・0%(同24ポイント増)と半数にのぼった。売上げ予測の前年比で最も高い回答は110%、最も低い回答は72%。
 令和8年を見通す上でのポイント(複数回答)については、9割以上が「米価・農産物価格の動向」と回答した。今の米価がいつまで続くかを不安視し、米価下落も視野に入れて経営に臨んでいる状況がうかがえる。また、令和7年の農機市場は好況だったものの、「一時的なもので跳ね返りを懸念」「バブル感があり、中期ビジョンが描けない」といった声も寄せられ、手放しでは喜べない経営の難しさが垣間見られた。
 令和8年の売上げ見通しを春と秋に分けてみると、春需の売上げ予測は、前年より「増加」と答えた割合が27・3%(前年比1・7ポイント減)、「横ばい」が31・8%(同7・2ポイント減)、「減少」が40・9%(同8・9ポイント増)となり、「減少」を予測する販売店が最も多かった。
 春需の対応策(自由回答)としては、令和7年に品薄状態で苦しんだ経験からか、「商品手配の強化」をあげた販売店が最多。また、「稲作以外の機械への注力」「肥料散布やインプルメントの拡充」といった幅広い商品展開のほか、「専業農家への推進」「修理力による他社との差別化」などの回答も寄せられた。
 春需で期待する上位5機種は、トラクタ、ロータリ・ハローなどの作業機、乗用田植機、草刈機、乾燥機。また、水稲直播関連機も6位に入り、関心の高さをうかがわせる結果となった。
 一方、秋需の売上げ予測では、前年より「増加」と答えた販売店は18・2%と最も少なかったが、前年に比べると8・2ポイント増えた。「横ばい」は27・3%(同20・7ポイント減)、「減少」は54・5%(同12・5ポイント増)となった。
 米価上昇がいつまで続くかわからないことや、農家戸数の減少、資材費の高止まりや価格改定など、不透明な農業情勢を鑑み、春需よりさらに慎重な予測となっている。
 一方、令和7年1〜12月の売上げ見込みをみると、前年(令和6年)に比べ「増加」した販売店が85・7%にのぼった。令和6年の同調査では、「増加」との回答が3割程度だったことから、米価上昇による影響が、令和7年になって販売店にもようやく巡ってきたことがうかがえる。「横ばい」の回答は0、「減少」は14・3%(対前年比26・7ポイント減)となり、売上げが落ち込んだ販売店が大幅に減る結果となった。回答の内訳をみると、対前年比110%と回答した販売店が最も多く全体の33・3%。次いで130%、95%との回答が1割程度と同率で、販売店により明暗が分かれた。
 これを7年度の決算ベース(見通し含む)でみると、前年に比べて売上高が「増加」した販売店が82・6%で、前年より45ポイント増と顕著な伸びをみせた。令和6年および5年の調査では約4割が「減少」と回答したが、今回は「減少」が17・4%と2割近く減っており、ここにも農機業界の好景気が見て取れる。
 令和7年に動きの良かった機種(複数回答)は、コンバインが最も多く、その後にトラクタと乾燥機が同率で続いた。前年、ダントツ1位だった草刈機は4位。米関連農機が好調の主因であることがわかる。具体的な割合をみると、販売店の47・8%がコンバインの動きが好調だったと回答。続くトラクタと乾燥機はそれぞれ43・5%だった。
 在庫量の変化を聞いた質問では、「横ばい」との回答が56・0%(前年比2ポイント減)、「減少」が40・0%(同8ポイント増)、「増加」が4%(同6ポイント減)となった。前年並みの在庫量をキープした販売店が半数以上を占めたが、ここ数年は在庫量を減らす販売店が増えている傾向だ。逆に、在庫量を増やした販売店はごくわずかという結果になった。
 現時点(令和7年11月末)における経営重点施策(複数回答)については、前年に続いて「利益確保」をあげた販売店が最も多く60・0%(前年比6ポイント減)。次いで「中古機販売」が32・0%(同2ポイント減)で2位。「主力機種販売」と「整備料金の徴収」が28・0%で同率3位となった。農機の需要増に伴い商品の確保が難しくなっている現状から、新型だけでなく中古機にも事業を拡大し、販売好機を逃さないようにしたいという販売店の戦略がうかがえる。

 
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  次世代に夢のある農業をつなぐ/農経しんぽう新春挨拶  
     
   米価の高止まりを背景に、好況に沸いた令和7年の農機市場。しかし、7年産米の作付け拡大などにより、米の民間在庫は近年にない高水準となり、この高値がいつまで続くのか疑問視されている。また、我が国農業の状況をみると、高齢化等による離農、人手不足、生産資材費の高騰など、抜本的には厳しい状況は変わらず、中長期的な展望を持った構造改革が引き続き求められているところ。こうした情勢を踏まえると、令和8年は、農機市場のみならず、全体的な農業景況についても慎重な見方がされている。労働力不足をカバーする技術として、スマート農業の普及が進んでいる。そして、農業者の高齢化・減少が進む中において農業の持続的な発展を図るため、スマート農業技術の現場導入と生産・流通・販売方式の転換と、これを支える仕組みとして、「農業支援サービス事業体」の役割が期待されている。高米価は、生産者の所得向上や営農意欲への刺激となる半面、消費者の米離れを助長しかねない諸刃の刃ともいえる。今後も、絶え間ない生産性の向上と低コスト化努力による米をはじめとする農産物の持続的生産と安定供給は、最重要課題である。労働力減少時代において、我が国の農業生産力を維持・強化し、食料安定供給を図るために、革新的なスマート農業技術の社会実装や農業サービス事業体の有効活用など、叡智を結集し、次世代の夢のある農業につなげていきたい。
 
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