アフターサービスに力/岡山県特集・各社の対応

㈱中四国クボタ(江草徹社長)は岡山県内の農機市場について、米価上昇が農家の投資意欲を後押しし、市場は好調に推移しているとみる。県南部は大規模法人や担い手が多く、農機更新の動きが活発だ。一方、県北部は中山間地域が多く個人経営が中心となるなど、県内でも市場環境には大きな違いがあるという。
昨年から続く米価上昇は農家心理を大きく変えた。長年の低米価で更新を見送ってきた農家が「今のうちに機械を入れ替えたい」と投資に踏み切るケースが増加。これまでの収益改善で経営に余力が生まれ、更新需要が一気に表面化した格好だ。一般農家の離農が進む一方で、農地は法人や担い手へ集積されつつあり、大型機械の需要も着実に高まっている。
販売面では受注が好調に推移するものの、最大の課題は商品の供給不足だ。コンバインは前年からの受注残を抱え、今年秋向けの機械も不足しているほか、トラクタも納期が秋以降となる機種が少なくない。営業現場では「販売したくても商品がない状態」と頭を悩ませるが、2026年1〜5月までのトラ、コン、田の売上げは、前年同期比110%で推移した(金額ベース)。
トラクタは60馬力、田植機は6条植え、コンバインは4条刈といったクラスが主流である。トラクタは「SL600H」、田植機は「NW60GS」、コンバインは「ER448N Limited」といった型式に人気が集まる。
アフターサービス事業も好調で、点検・整備需要は前年を大きく上回る。しかし、サービスマン不足は深刻で、同営業部では休日数を毎年増やすとともに、日曜日の休業を徹底するなど、働き方改革を推進。人材確保と定着を図りながら整備体制の維持・強化に取り組んでいる。
今後の動向について、同社の営業本部(中国)副本部長の伊藤生希氏は
「下期も受注残があり見通しは明るい。ただ、現場としては1日も早い商品供給の正常化を期待したい」と話す。
ヤンマーアグリジャパン㈱中四国支社(上原茂樹支社長)は、岡山県内の農機市場について、「昨年からの米価上昇を背景に、担い手農家を中心とした農機への投資意欲は引き続き高い」とみる。一方で、資材や燃料価格の高騰により、小規模・兼業農家では更新を見送り、修理や中古機を求める動きが強まるなど、市場の二極化が鮮明になっているという。
販売面では2025年度について、前年度比で堅調に推移した。米価上昇を追い風に、担い手による中・大型機の更新需要が伸びた。売れ筋はトラクタが50〜60馬力、田植機が6、8条植え、コンバインが4条刈以上のクラスで経営規模の拡大で大型化が進んでいる。
一方、需要増を背景に、一部機種では納品まで時間を要する場合もあるが、受注は堅調に推移しており、同社では順次納品を進めながら対応している。
高齢化や人手不足により、農家からは省力化や作業効率向上に関する相談が増えている。自動操舵や直進アシストなどスマート農機への関心は高く、高温対策を見据えた品種選定や栽培方法など営農面の相談も目立つ。
草刈りや水管理の省力化につながる機械への期待も高まっているという。そんな中、ラジコン草刈機「YW500RC,AE(セル仕様)」の荷動きが堅調だ。県北では人手不足の問題もあり、操作性の良さで人気を集める。同機はみどり投資促進税制の対象機種である。
アフターサービスでは、繁忙期に機械を止めないための予防整備を重視。事前点検を徹底し、若手サービスマンの育成やベテラン技術者からの技術継承を進め、整備体制の強化を図る。近年は機械性能の向上により重大故障は減少した一方、操作方法や設定に関する問い合わせが増えており、利用者への対応力向上も重視する。
下期は、米価の動向が最大の焦点とみる。岡山事務所の田上靖浩エリアマネージャーは「現在の購買意欲は維持されているが、新米価格次第では農機投資が慎重になる可能性もある。供給体制の正常化と合わせ、市場の動きを注視していきたい」としている。
㈱ISEKI Japan中四国カンパニー(曽我部智社長)は、昨年11月に開催した岡山営業部での展示会で多くの受注を確保したことを追い風に、今年上期も堅調な販売を維持している。昨年は価格改定前の駆け込み需要が市場を押し上げたが今年は展示会後から受注を積み重ね、堅調に推移。中四国内でトップの販売実績をあげた。
岡山営業部の小泉道也部長は「自社製品の供給不足の影響を受ける中、事前の製品手配を進めたことが奏功したと思う。また、他社製品の提案により売上げを確保したこともある」とし、小林純一次長は「それでも今年の5月頃は特に田植機の供給にとても苦慮した」と苦笑する。
大規模担い手層の更新が好調の中、県全体を見渡せばトラクタは35馬力前後の中型機が中心となり、担い手や中規模農家の更新需要も堅調だ。田植機は5、6条植え、コンバインは3〜4条刈クラスの動きが目立つ。地域農業を支える中核農家も機械更新を進め、市場を下支えしている。
トラクタは「BFシリーズ」の35馬力、田植機は「さなえPRシリーズ」の5、6条植え、コンバインは「フロンティアHFCシリーズ」の3条刈に人気が集まる。
営業面では実演会や展示会に加え、インスタグラムを活用した情報発信にも力を注ぐ。実演風景や新商品、研修会などを紹介し、若い世代との接点づくりを進めるとともに、営業担当による訪問活動を基本に、地域とのつながりを深めている。小泉部長は「インスタの影響力は想像以上に大きい。内容をさらにブラッシュアップすればより効果的なPRになるだろう」と期待を寄せる。
小林次長は「アフターサービスの面では整備受注が急増している。整備工賃の売上げも相当なものになる。しかし、人手不足が課題」と話す。
下期については、昨年の好調な反動もあり慎重な見方を示すものの、米価動向を注視しながら需要を取り込み、展示会や実演会を通じて地域農業を支える提案活動を継続していく構えだ。
倉敷河上農機㈱(山部修嗣社長)は、昨年から続く米価上昇を背景に、今年2〜5月のトラクタ、田植機、コンバインの販売台数が前年比130%で推移した。一方で、米価の先行きには不透明感も残り、山部社長は「物の確保と確実な納品が重要になる」と今後を見据える。
今年は米価上昇を受けて更新需要が高まり、中古機不足も新車販売を後押しした。一方、昨年積極的に投資した農家からは「今年は様子を見たい」との声も聞かれ、米価の動向次第では需要が落ち着く可能性もあるとみる。
また、電子部品不足や人手不足などを背景に、一部機種では納期が長期化する状況も続いており、「売れても納品できなければ意味がない」と供給体制の重要性を強調する。そんな中、同社では7月24、25日にコンベックス岡山で恒例の「大商談会」を開催し、約1300人が来場。同展示会を「下期を見据える1つの山場」と位置付け、販売拡大と顧客との関係強化につなげている。
農家から寄せられる相談では、高齢化や後継者不足が依然として大きな課題だ。スマート農機への関心は高まるものの、営業エリアには中山間地域が多く、狭い圃場では大型の自動運転機械を活かしにくい。導入が進むのは、直進アシスト機能を備えたトラクタや田植機など、従来機に近い操作性で作業負担を軽減できる機種が中心という。そのため地域の営農条件に合わせた提案を重視している。
アフターサービスについては、コンバインに特化した技術研修を実施し、診断機器の活用や整備技術の向上を図る。狙いは農繁期のマシンダウン防止で、「シーズン中に機械を止めないことが最も重要」と山部社長。事前整備の徹底により、収穫期の安心につなげる考えだ。
下期について山部社長は「受注した機械の確保と確実な納品を最優先としつつ、米価次第では市場が厳しくなる可能性もある」とし、「大商談会を弾みに受注拡大を図り、アフターサービスの充実にも努め、地域農業を支えていきたい」と話した。






