アグリビジネスの最新ニュースをお届けします
MENU
令和8年5月18日発行 第3598号 掲載

ナイジェリア訪問で日本技術に熱い期待/JICA専門家が活躍・アフリカ農業への道②

米食が広がり、米の増産とともに関連農業機械のニーズが高まっているアフリカ。アフリカはまさにこれから本格的な農業機械化が始まるところであり、ポテンシャルが大きく、注目が集まっている市場である。本連載では前回に引き続き、アフリカにて活躍するJICAの農業機械化専門家・大石常夫氏による寄稿にて、現地事情を紹介する(不定期連載)。 ◇ 今回はJICA持続的農業機械化アドバイザーが4月末にナイジェリアを訪問した際の活動について報告する。同アドバイザーはガーナを拠点にして同国の農業機械化促進に加え、コートジボワールとナイジェリアにおける「日・アフリカ農業イノベーションセンター(通称AFICAT)」を通じた本邦企業の優れた農業技術の導入促進と開発への適用を進めている。今回の出張では、4年前からJICAが進めてきているナイジェリアにおけるAFICAT活動の調整活動を行った。 まずナイジェリア国について少し触れてみる。ナイジェリアは西アフリカに位置し、アフリカ最大の人口である2億3000万人を擁する。面積は日本の約2.5倍でアフリカ内では14位であるが、その経済規模はアフリカ第4位と、原油・天然ガスを中心に農業や通信など多様な産業を抱える、まさに大国である。農業分野に関しては、労働人口の約3分の1が農業に従事し、農業セクターの名目GDPは約25%を占める基幹産業である。作物ごとの生産量でみると、キャッサバとヤムイモは世界最大、ソルガムとササゲは世界第2位の生産量を誇り、米に関してはアフリカ最大の約900万トンを生産する。輸出作物にはカシューナッツ、カカオ、ゴマなどがあげられる。 そのような経済規模やポテンシャルの高さが注目される市場である一方、世界銀行が公表している「国際的な極度の貧困率」(購買力平価換算において1日2.15ドル未満で生活する人の割合)は国民の約30%に達し、都市部と農村部との経済格差の大きさやそれに起因する社会問題、治安の悪さも抱えている。治安に関してガーナと比較してみると、ガーナでは北部の極一部地域が外務省危険レベル2であるのに対し(ほとんどの地域はレベル1)、ナイジェリアは全ての地域が危険レベル2以上に分類されており、そういった国内の治安の悪さは海外からの民間投資を阻害している課題の1つでもある。 そのような状況下にて行った今回の出張は9日間という短い期間であったが、大変充実し、かつナイジェリアの人々の日本技術に対する熱い思いを感じさせられた日々であった。 まず、連邦農業・食料安全保障省の農業機械化局が2日間にわたって開催した「国家農業機械化政策と投資戦略に関する事前検討ワークショップ」に参加する機会を得た。これまでナイジェリアでは農業機械化政策は進められてきたものの、農業機械化に関する正式な政策文書(ポリシーペーパーや農業機械化・投資戦略など)はなく、国内の農業機械化関係者が長く切望してきた取り組みといえる。さらにサブ・サハラアフリカ諸国では、FAO等のドナー機関の支援を得て政策文書策定や改訂が行われることがほとんどだが、今回はナイジェリア国内の農業機械化関係者自らが約6カ月かけて文書を取りまとめ、ワークショップは農業機械化局がナイジェリア国内で民間スポンサーを探して開催したものであり、その中心的な役割を担った農業機械化局の行動力は称賛に値する。政策提言書(ドラフト版で46ページ)と投資戦略文書を、農業機械化に関わる産官学の関係者約50名が一堂に会し、政策、投資、官民連携、若者と女性の参画という4つのテーマで、文書を充実させていった。政府主導による圃場機械導入が単発的に行われている中で、さらなる民間促進による機械化を含む作物のバリューチェーンの強化、機械導入後の適切な運用方法の確立、若者の参画による農業分野の拡充などについて活発な議論が行われた。今回の協議結果を踏まえ、6月の最終版の発表会に向けて作業が続けられていく。 AFICAT関連の活動としては、主要関係者との個別面談後、4月29日にAFICAT事務局会議を開催した。メンバーは農業機械化局、アグリビジネス・マーケティング局(ABM)、農業機械化センター、ナイジェリア商工会議所とJICA側からの参加者である。昨年12月に開催したAFICAT委員会での提案事項を踏まえ、本邦技術の情報を潜在的なユーザーに対して直接的に発信していく必要性が強調された。それは単なるカタログ情報の発信や紹介実演に留まらず、本邦製品(例:本邦メーカーのエンジン)とナイジェリア地元技術との共創の取り組みというアイデアも出された。また、ABM内に開設されている米の検査ラボの更なる活用(本邦製の検査機器が設置されている)、ラゴス国際見本市や地方の展示会などにテーマを絞った効果的な参加などについて協議し、会議は3時間半に及んだ。 上述の通り、治安の制約もあって日本人がなかなか地方で活動することが難しい中、ナイジェリア関係者の本邦技術に対する理解と大きな期待が、この制約を乗り越えていけるのではないかと勇気づけられた3時間半であった。今後は事務局メンバーが核となって、今年のワークプランを取りまとめていく。 ※AFICATとしては、引き続きナイジェリアに進出およびビジネス展開をされる企業様を積極的にサポートをしてまいります。ご要望がございましたらJICA持続的農業機械化アドバイザーのメールアドレス(oishi.mecha@outlook.jp )または、JICAのAFICAT事務局(aficat@jica.go.jp)までお問い合わせください。 ◇ 大石常夫氏=日本国内で自動車整備士、作業機メーカー・㈱佐野アタッチ研究所(現・㈱アグリアタッチ研究所)での製品開発を経験。国際協力分野ではモロッコでの青年海外協力隊経験(平成2年3月より2年間)を皮切りに、日本のNGOや複数国に及ぶJICA専門家として20数年の経験を有する国際協力のベテラン。JICA経済開発部で国際協力専門員として主に農業機械化の分野を担当、2026年1月から西アフリカのガーナ共和国を拠点に「持続的農業機械化アドバイザー」としてAFICAT重点国であるガーナ、ナイジェリア、コートジボワールにおいてAFICAT活動を含む各国の農業機械化支援に従事。

カテゴリー別最新ニュース