MENU
令和8年6月22日発行 第3602号 掲載

スペシャルトークライブ開く/クボタ

 ㈱クボタ(花田晋吾社長)は10日、本社(大阪府大阪市北区)の協創スペース「Konnect Field For Innovation」で、「GROUNDBREAKERSスペシャルトークライブ」を開いた。テーマは「日本の農業の未来を考える 二極化する農業のゆくえ」。ライブには久松達央氏(㈱久松農園社長)と井狩篤士氏(㈱イカリファーム社長)が登壇し、今後の農業の在り方や農業経営の方向性について意見を交わした。会場には農業者や関係者らが集まり、小規模経営と大規模経営それぞれの可能性や課題に耳を傾けた。
 トークの冒頭、久松氏は「企業型の農業と職人型の小さい農業に二極化していく」と語り、日本農業の将来像について持論を展開した。
 一方、井狩氏は米や麦、大豆を大規模に生産するメガファーム経営者の立場から、自らの経営実践を紹介。経営規模こそ異なるものの、両氏に共通していたのは農業を「経営」として捉える視点だった。
 井狩氏は、戦後の農地改革によって細分化された農地や制度上の課題に触れながら、自身が農業を継いだ当時を振り返った。就農後は販売先の見直しや資材調達の効率化に取り組み、農産物をより有利な条件で販売する仕組みづくりを進めた。 そこで「1円でも原価を下げ、1秒でも短縮し、1円でも高く売る。その積み重ねが利益になる」と語り、農業も他産業と同様に経営感覚が欠かせないと強調した。
 さらに、生産だけでなく販売や農地整備、作業受託なども取り込む「内製化」の考え方を紹介。農産物の生産部門だけでは収益に限界があるとして、川上から川下までを見据えた経営の必要性を訴えた。地域の農地集積や基盤整備についても持論を展開し、「農業は弱い産業ではない」と力を込めた。
 井狩氏はまた、経営規模の拡大とともに人材育成や地域との連携も重要な課題と指摘。農地を守りながら次世代へ引き継ぐことも大規模経営の役割の1つだとし、持続可能な農業の実現に向けた取り組みの必要性を訴えた。
 一方の久松氏は、個人消費者や飲食店へ農産物を直接販売するDtoC型農業を実践。独自のブランディングや顧客との関係構築を通じて、「小さくて強い農業」を追求している。
 著書でも主張するように、農業人口の減少を単純に悲観するのではなく、多様な経営体が自立して存続できる仕組みが重要と指摘した。
 久松氏は、インターネットや物流網の発達によって、小規模経営でも消費者や飲食店と直接つながることが可能になったと説明。農地や人員などの経営資源で大規模経営に劣っていても、独自の価値を提供することで十分に競争できるとの考えを示した。
 また、農業経営の在り方は一様ではないとし、地域や作目、販売方法に応じて最適な形は異なると説明。画一的な規模拡大ではなく、それぞれの強みを活かした経営が重要との認識を示した。
 その上で、業務用需要の拡大や流通構造の変化によって、今後は大規模な企業型農業と専門性を磨いた職人型農業への二極化が進むとの見方を提示。中間的な経営体は厳しい競争にさらされるとしながらも、それぞれが強みを磨くことで活路は開けると語った。
 両氏がそれぞれ持論を展開するなか、会場からは「両氏に共通するものは何か」との質問が飛んだ。
 これに対し久松氏は「個別最適より全体最適を美しいと思う」と述べ、経営規模や手法は異なっても、地域や産業全体の発展を見据える視点は共通しているのではないかとした。
 井狩氏も同意したうえで、「どういうことをやったら一番人の役に立てるかを常に考えている」とし、「農業は弱い産業ではない」と強調。地域とともに発展する経営の重要性を訴え、農業の持つ公共的な役割についても言及した。
 討論を通じて両氏は自ら考え、行動する経営者の存在が日本農業の将来を左右するとの認識で一致した。

カテゴリー別最新ニュース