各社の対応①:農家の課題解決へ/北陸特集

㈱小出農機(小出一夫社長・富山県富山市新根塚町1の9の41)の2025年度の販売実績は堅調に推移し、前年を上回る見通しとなっている(決算は6月末)。「米価の上昇を受け、久しぶりに活況だった」と小出社長は振り返る。ただし恩恵を受けたのは営農組合や大型担い手が中心で、「離農がさらに進んだ印象がある」とも語った。米価が適正水準に戻れば同社の売上げは落ち着くとの見方も示し、製品価格の上昇が続く中で、農家の負担増には懸念をにじませた。
2025年度の主要機の動向では、大型化が一段と進んだ。トラクタは30馬力、38馬力が主力で、72馬力も動いた。田植機は6条、8条植えが中心で、コンバインは3―5条刈が主流となった。米価上昇の影響で、色彩選別機や米穀乾燥機の需要も伸びた。恒例の年3回の展示会は来場者数が約15%増加した。
同社の店舗には「三菱コンバイン」の看板が掲げられている。「宣伝は企業の基本。お客様に情報が届かなければ売れない」と小出社長は強調する。店舗看板や常設広告の効果を重視し、「語りかける店舗」として地域への発信を続けてきた。三菱マヒンドラ農機の事業撤退について話題を向けると「三菱だから買ったというお客様も多い」と語り「部品供給が続く限り、三菱ユーザーに安心してもらうため看板はあのままにする」との姿勢を示した。
2026年度の推進機種は自走式草刈機で、実演をベースに販売の拡大を目指す。その他の商品についても取り扱いの幅を広げ、知識を深めることで提案力を高めたいとした。展示会は今年度も10月、翌3月、6月に同社拠点の「テクノサイドKOIDE」で予定している。整備・修理サービスについては、研修会などを増やし社員の技術力向上に取り組んでいる。
石川スズエ販売㈱(杭田節夫社長・石川県金沢市黒田2の373)は、農機販売を中心に、米や肥料の取り扱い、メンテナンスサービスまで幅広く手がける地域密着型の企業だ。同社の2025年度の実績は堅調に推移した。農機販売が全体的に好調で、特に乾燥機や除雪機などの売上げが業績を押し上げたという。一方で、米販売は大きな影響を受けた。仕入れ価格が例年より大幅に上昇し、秋以降は高値が響いて販売が鈍化。結果として在庫が積み上がり、粗利を押し下げる要因となった。肥料については値上げによる買い控えがみられ、売上げは前年の9割に留まり、主要部門の中では最も厳しい結果となった。杭田社長によれば、農機の慢性的な品薄は続き、値上げの常態化や供給の遅れなどを背景に、顧客の購入判断にも慎重さがみられるようになったという。また、米価の推移が落ち着かず、農業の現場にも影響が出た1年だった。加えて野菜農家では価格競争が激しく、倒産が増えるなど、地域農業全体が揺れているという。
2026年度に石川スズエ販売が掲げるテーマは、阪神タイガースの元主力打者・掛布雅之氏にちなみ、「カケフ(稼ぐ・削る・防ぐ)」と名付けた。売上げを確保しつつ経費を抑え、将来のリスク要因を取り除くという基本姿勢を示す。「商売の原則に立ち返ることが大事」と杭田社長。
同社の強みの1つがメンテナンス部門だ。農家の減少が続いているが、その一方で、一般顧客やホームセンター経由の修理依頼が増えている。ホームセンター・コメリと提携し、管理機などの納品・修理を担当。サービススタッフ9人が南北50㌔に及ぶ広いエリアをカバーしている。「機械は必ず壊れる。修理ができる会社が生き残る」と強調する。
今後について杭田社長は、米価の動向は、2026年産の価格は、税込みで60㌔2万円を切ると予測した。また、農家の減少による耕作放棄地の増加など、地域農業が抱える課題に危機感を示す。一方で、小口販売やメンテナンスを軸にした安定収益の確保に手応えも感じている。「経費を抑え、適正な価格で販売する」という商売の原則を徹底しつつ、地域の営農を支える役割をこれからも着実に果たしていく構えだ。
㈱ヨシミ商会(吉田耕司社長・福井県福井市大和田町22の14の1)の2025年度の実績は前年比107%と堅調だったが、吉田社長は米価上昇による大きな追い風は感じなかったと振り返った。同社が主力とする中小規模の顧客には「設備投資に回るほどの余力は広がらなかった」という。それでも、「米価の話題をきっかけに農家の実態がメディアで取り上げられ、農業への理解が進んだ1年だった」と前向きに捉える。
2025年度の主要機の動向で目立った動きはなく、色彩選別機や精米機といった米関連の調整機が伸長した。これについては「直接米を販売する農家が増えたのでは」とみている。その他は、作業機や草刈機関連が動いた。2025年度は部品不足や半導体の供給遅れが響き、主要機や周辺機が品薄となったが、その流れは2026年度に入っても続いている。需要の見通しが立ちにくく、受注発注型の販売が中心となり、在庫を抱えにくい状況も続く。
そんな中、ヨシミ商会が力を入れるのが除雪機事業だ。農業従事者の減少を見据え、農家以外にも販売できる中価格帯の商品として位置付けている。法人顧客を中心に、除雪機の保管サービスをセットで提供し、販売後の収益確保にもつなげている。法人を重視する理由は、同社の営業時間帯と相性が良いためだ。個人客は購入相談や修理依頼が週末に集中しやすいが、法人は平日対応が基本で、請求や支払いも安定している。金融機関からの紹介も増え、「顧客層の広がりが事業基盤の強化につながっている」と述べた。また、2026年度は、主要な除雪機メーカーが5―6月に購入予約を締め切る。こうした事情を顧客に説明した結果、「昨年買えなかったので今年は早めに予約したい」という声が増えているという。
整備・修理サービスでは、4月から工賃を引き上げた。部品価格や送料の明確化など、従来の「無償サービス前提」の慣習を見直し、「適正な利益を確保しながら、継続してサービスを提供できる体制にしたかった」と語る。除雪機を通じて他業種の顧客と接する機会が増え、費用の考え方も自然と変わってきたという。また、三菱マヒンドラ農機の事業撤退については、同社にも影響が及んでいる。「困っている方の力になりたい」と、可能な範囲で三菱ユーザーを受け入れている。






