各社の対応:柔軟に事業領域拡大/埼玉県特集

㈱関東甲信クボタ(冠康夫社長)はここ数年、売上実績が好調に推移している。長嶋純第1営業部長は昨年の状況について、「米価が良かったので、大規模農家や担い手農家を中心に販売は好調だった。主要3機種だけでなく、関連商品の伸びも目立った」と述べた。
今年に入って大きな追い風となったのが、埼玉県によるスマート農業導入コスト低減支援事業(以下、スマ農導入事業)だ。補助率が3分の2と大きく、ほかの補助金事業と比べて、農家が比較的取り組みやすい内容だったこともあり、幅広い受注につながった。なかでも、自動操舵やGS機能付きトラクタの動きが目立ったという。
東京都に隣接する県南部では小規模農家が多いが、北部では農地集積や基盤整備の動きが強まっており、規模を拡大する農家が増加中。それに伴い農機の大型化も進み、大・中規模農家を中心にトラクタの馬力アップや乾燥機への投資が増えている。
野菜作については、今夏の高温や長雨、日照不足などの影響で厳しい状況となった。一方で、大都市圏に近い立地や輸送面での利点を背景に、施設園芸への取り組みや企業による農業参入が増えており、新たな顧客獲得のチャンスにつながっているという。
経営規模の二極化が進むなか、拡大や法人化を進める大規模経営体の農機需要と、小規模農家が農業を継続するための環境整備―この双方を見据えながら、引き続き地域に根ざした取り組みを進めていく。
ヤンマーアグリジャパン㈱関東甲信越支社(杉山靖彦支社長)関東営業部埼玉ブロックの2025年は、前年を上回る実績となった。4月1日の価格改定を前にした需要もあり、特にトラクタとコンバインが堅調に推移した。
一方、需要が高まるなかで、農機を必要な時期に使用できるよう、余裕をもった導入・更新の検討がこれまで以上に重要となっている。従来の、故障を機に更新を検討するスタイルから、事業に支障が生じる前に計画的な更新を提案する営業への転換が求められている。さらに、乾燥調製施設の新設や増設、メンテナンスも増えており、「お客様の投資意欲の高まりを感じた」と右島保エリアマネージャーはいう。
2026年は、4月からの値上げの影響もありスタートは緩やかとなったが、県のスマ農導入事業が発表されたことが追い風となった。「事前に経営診断の申し込みが必要なため、早い段階からお客様への情報提供に集中できた。予算規模もあり厳しさを感じていたが、予想を上回る件数が採択され、日頃の『訪問活動の徹底』の重要性を改めて感じている」と右島エリアマネージャー。
今年の重点方針については、基本活動である「訪問活動の徹底」をあげるが、先のスマ農導入事業の経験から、訪問だけでなく「何を提案できるかが重要」と認識を改めた。
「農機は売って終わりではない。お客様と一緒に考え、長くお使いいただけるよう、環境整備も含めた提案が必要になっている」とし、日々の会話や各種研修を通じて社員のレベルアップを図る。
右島エリアマネージャーは、「埼玉県は都市近郊の水稲中小農家が多く、米価下落により二極化はさらに進むと予想している。規模拡大を進める担い手農家、地域の米生産を支えている中小農家のいずれも重要なお客様であり、それぞれのニーズに応じてしっかりサポートする体制を整えていきたい」と述べたうえで、「昨年から市況が大きく変わり、早場地区からは米価の大幅な下落の声も聞こえてきている。お客様の購入意欲に米価が与える影響は確かに大きいが、市況に左右されない事業継続が重要」と力を込めた。
㈱ISEKI Japan関東甲信越カンパニー(瀧澤雅彦社長)の2025年の販売台数実績は、トラクタ、田植機は前年を大きく上回ったが、他の主要機種は前年並みとなった。一方、金額については、高機能型のBFトラクタやオペレスタ搭載の田植機の販売が進み1台当たりの単価が上がったため、前年を超える結果となった。
広瀬三喜男埼玉営業部部長は「1農家様当たりの作付面積が若干少なく、また、畑作農家様なども多いため、米価高騰による設備投資意欲が想定していたより進まなかった」と振り返った。
2026年は、コンバイン以外の一部機種で前年を若干下回る結果となっている。ただし、県のスマ農導入事業などによって高機能型機種の需要が高まり、金額ベースでは前年を超えて推移。今後の米価の動向など不安材料はあるものの、「農機の販売は、ある程度のレベルで推移すると見込んでいる」と広瀬部長は前向きだ。
今年は、稲作・畑作ともに需要があるトラクタに重点を置いて取り組んでいる。「埼玉県は麦の作付けも多いため、BJトラクタとシーダーを併せた推進に注力したい」と広瀬部長。新型トラクタの試乗機会を増やしてPRを強化するべく、現在、県内数カ所でBJトラクタ実演試乗会の開催を検討している。
また、同社は景観整備事業にも注力していることから、まずは郊外を中心にTXGやSXGのトラクタ型常用モアを推進し、トラクタのさらなる販売増加を進めていくとともに、地球環境を意識し、CO2削減を目指した電動モア(EGO)の販売強化にも取り組んでいきたいとした。
㈱トミタモータース(桑波田信久社長)は昨年、過去最高の販売実績を更新した。桑波田社長は「大規模農家を中心に、昨年得た収入で農機を更新しようという動きが強まったため」とみる。
今後の米価変動によって、農家の収入減やそれに伴う農機の買い控えが懸念されるが、最近の品薄状態や値上がりの常態化を経験した農家の多くが、必要な農機を前倒しで購入する動きがみられるという。
スマート農機の価格高騰や納期の長期化を背景に、FJD自動操舵システム(FJDynamics社製)への問い合わせが増加中だ。既存の農機に取り付けて使用する後付けタイプで、高水準の操作精度と低コストを兼ね備えている点が最大の強み。整地やマルチ作業など幅広い用途に使用できるので、顧客や地域販売店の要望を受け、様々な活用シーンを想定した個別実演にも力を入れる。現在、他社の自動操舵システムの導入も検討しており、より広範な展開で顧客ニーズに柔軟に対応していく。
数年前から始めたドローン農薬散布請負事業は、昨年から専任者を配置し、本格的に稼働している。農薬販売と散布作業を併せて受注することで大きな収益につながっており、「いずれはドローン教習施設の設置も考えたい」との構想も。
中古農機はここ数年、新機以上に供給不足が深刻だ。同社では全国のネットワークを駆使して良質な中古農機を探し、自社の運搬用トラックで引き取りを行うなど、供給確保に積極的に取り組んでいるが、「中古市場は今、需要と供給のバランスが崩れている状態。新車との価格差も縮まってきている。そのため、市場の動きをみながら、様子をうかがっている状況だ」という。
「今後は、物販依存からの脱却を目指したい」と桑波田社長。農機販売だけに留まらず、整備・修理、中古機販売、農機レンタル、作業受託など、顧客ニーズに応じて事業領域を広げ、地域の販売店としての存在感をさらに高めていく。
㈱ホソダ(河口淳子社長)は2025年の決算で、好調だった前年を上回り、売上高、利益とも最高水準となった。河口拓也専務取締役は「2013年に私が入社して以降、ここまで質が良い決算は初めてだ」と振り返った。2026年になっても好調は続いており、前年より粗利がさらに2割ほど上昇しているという。
一方で、昨今の納期長期化が、営業スタイルや在庫管理に影響を与えている。同社では、大量の在庫を抱えることを止め、注文に応じて発注する形を基本とした。「金利上昇によって在庫保有コストが高まっている。在庫をどこまで持つかは経営上の重要な問題だ」と河口専務。現在は、発注量や滞留期間を適切に管理し、在庫量を一定水準に抑える方向に動いている。
その背景には、営業スタイルの変化もある。農家の法人化や世代交代によって経営計画に基づいた更新が進んでおり、事前の情報把握がしやすい状況になりつつある。そのため、営業担当者が顧客を訪問するだけでなく、DX化やITを取り入れた営業体制も模索しているというが、「DX化を進めるに当たり重要なのは、ムダに多くの人の手間を取らせないことと、確実に現状が改善されること、の2点だと思う。誰もがストレスのない形でDX化を進めるためにはどうすればよいか、何をどこまでAIにやらせるのがべストなのか、人がやるべき仕事とは何なのか―日々考えている」と河口専務。
今年創業70周年を迎え
たホソダ。好調な数字を一過性のものにせず、従来の販売慣行を見直しながら、効率化と顧客との関係維持を両立させることが大きな課題。さらなる飛躍を目指し、若き経営者の取り組みは続く。





