各社の対応:省力化需要を商機に/広島県特集

㈱中四国クボタ(江草徹社長)は、県内の農機市場について、米価上昇を受けた農家の設備投資が一服し、今後は米価を見極めながら慎重に判断する動きが強まるとみる。一方、農機価格の上昇を前に駆け込み需要もみられた。
広島営業部の1~6月の販売実績は、トラクタ82台(前年83台)、田植機57台(同63台)、コンバイン34台(同15台)だった。コンバインは前年受注分の納入も押し上げ、トラクタは45~60馬力、コンバインは4条刈が中心で、大規模層では大型化が一段と進んでいる。
農機価格の上昇から、装備を絞った低価格機を求める声もある。広島営業部の田中康成部長は「機械が高くなり、修理して長く使おうという農家も増えている」と話す。一方、省力化では自動操舵・直進アシスト(GS)搭載機への関心が高い。
広島営業部は県内5拠点にRTK基地局を設置。ドローンやKSASなどスマート農機関連の講習会(RTKセミナー)を、県内の各拠点で農家を招いて実施している。午前は座学、午後からは農家と一緒に実演を行う。テーマを絞った座学と実演を新規顧客との接点づくりにも活かしている。このような取り組みもあり、庄原市内でAgri Rоbо田植機「NW80SA」2台の成約につながった。
イベントは11月18、19日にコンベックス岡山(岡山市北区)で「AGRI FRONTIER IN CHUSHIKOKU」を開催する。中四国クボタ10周年の大型イベントで、水田、野菜、畜産など分野別の提案やアグリロボの実演、大阪・関西万博でも披露された未来型トラクタの展示などを予定する。
田中部長は「お客様が展示内容に興味を持ち、自ら足を運び、次の提案や商談につながる展示会にしたい」とし、下期の受注につなげる構えだ。
ヤンマーアグリジャパン㈱中四国支社(上原茂樹支社長)は、県内農機市場について、米価上昇を背景に設備投資意欲は回復傾向にあるものの、資材や人件費の高止まりから、投資判断には依然として慎重な姿勢がみられると分析している。こうした中、2026年4~6月の主要3機種の販売は前年同期を上回り、堅調に推移した。
大規模担い手層では省力化や規模拡大を目的に、中・大型機への関心が高まる一方、中小規模農家層では高齢化や後継者不足から、修理や中古機での更新が増加傾向にある。
農家の相談内容も変化している。以前は適した機種をたずねるのが主だったが、広島事務所の山本一朗エリアマネージャーは「最近は『この人数でこの面積を維持するには、どんな省力化機械が必要か』という相談が増えた」と話す。そのため直進アシストや自動操舵への関心が高く、大規模担い手層では草刈り、水管理、防除の省力化需要が高まっている。
営業の形も変化している。農家が動画でいち早く商品情報を収集し、販社の提案前に実演を依頼するケースが増加。ラジコン草刈機も動画を見た農家から実演依頼が寄せられたという。
山本エリアマネージャーは「我々が提案する前に、お客様が先に情報を得ている場合もある。そのため、自社製品はもとより、関連製品についても常に最新の知識を取り入れ、お客様へ情報提供していくことが重要」と変化を語る。
イベントは8月7、8の両日に甲山、大和、世羅の支店合同で「新商品発表合同展示会」を広島事務所で開催。約300人が来場し盛況だった。
サービス面では農繁期の故障時間短縮へ事前点検を推進。拠点間で整備を応援するほか、若手整備員の育成とベテランからの技術継承にも力を注ぐ。
農機価格が上昇する中、資金面では残価設定型の割賦商品「楽らくGОGОプラン」の提案を強化する。山本エリアマネージャーは「農機を買えないと諦めるのでなく、こうしたプランもあると、お客様に寄り添った提案をしていきたい」とし、下期も営農継続につながる提案に力を入れる。
㈱ISEKI Japan中四国カンパニー(曽我部智社長)は、今年上期の広島県農機市場について、「昨年が良すぎた。前年と比べれば落ちているが、例年と比べると平年並み以上で推移した」とみる。特にコンバインは昨秋に受注した機械の納品もあり、販売台数を伸ばした。一方、足元では受注に供給が追いつかず、契約を確保しても納品できないケースが生じているという。
県内では中山間地域を中心に小規模農家が多く、トラクタは25~30馬力、コンバインは3、4条刈といったクラスの荷動きが目立つ。一方で担い手への農地集積を背景に大型機も動いており、農家の二極化が農機需要にも表れている。新品価格が上昇する中、中古機を求める声も強いが、中古機そのものが不足しているという。
米価については昨年の上昇で農家の購買意欲が高まったものの、先行きには不透明感も漂う。広島営業部の小泉道也部長は、「今後の米価次第では、農機の投資について〝様子見〟が強まるのでは」と推察する。
こうした中、同営業部は3月20、21日に敷地内で「スマート農機・農業 体感・講習×展示会」と題したイベントを開催。作業機メーカー19社が協賛し、2日間で約1600人が来場するなど盛況だった。自動操舵や農業用ドローン、営農支援システムのほか、乾田直播の講習、実演などを行い、省力化技術を提案し、好評を博した。
広島営業部では人材確保を重要課題に掲げ、残業をしない日(農閑期のみ)を適宜設けるなど、働き方の見直しにも着手。小泉部長は「人をどう確保し、育てるかが大きな課題」とし、社員が長く働ける環境づくりと、顧客への迅速な対応を両立させる考えだ。
11月11~14日は下期の山場として「農家とヰセキの秋祭り」を同営業部で開催する。新製品のPRとさらなる拡販に弾みをつける構えだ。
㈲迫農機商会(迫真治社長)は、今年上期の農機市場について、米価は上昇したものの、小規模・兼業農家では新品への更新に慎重な動きが続いた。迫社長は「売れるより修理が多い」とし、高額修理なら更新せず、作業を委託する農家もいる。
1~6月の販売はトラクタ、コンバインとも前年並み、田植機は伸長した(金額ベース)。トラクタは台数確保が難しく、コンバインは4条以上が動いた。新品、中古農機とも品薄で、離農農家から出た機械が買い取り業者などへ流れ、地域農機店が中古機を確保しにくい。
農家からは米価の先行きを懸念する声もある。迫社長は「農家が安心して営農を続けるには農産物価格の安定が必要」と指摘。中山間地域では高齢化が進む一方、複数の集落協定の連携やスマート農業関連の補助事業も活用され、地域で農機を共同利用する仕組みに期待を寄せる。
主要3機種以外では草刈機の需要が旺盛で、乗用型やラジコン式、電動式など幅広い機種が動く。農家が動画などで見つけた機種の相談を受ければ、メーカーの協力で実演機を手配する。「機械はカタログで売るのではなく、実物で売る」とし、実際に使って納得してもらう提案を重視する。
アフターサービスでは、メーカーを問わず持ち込まれた農機の修理に対応。販社の営業拠点集約が進む中、新たに訪れる農家もある。既存顧客に加え新規の整備も増え、「うれしい悲鳴だが、なかなか大変」と迫社長は苦笑する。
下期は米価の行方に加え、製品不足で先行き不透明な状況が続く。それでも迫社長は「農家が営農を継続できるよう、我々も努力しないといけない」と強調する。修理や代替機の融通など地域農機店ならではの小回りを利かせ、農家の営農を支えていく構えだ。






