アグリビジネスの最新ニュースをお届けします
最新号をみる
MENU
令和8年9月7日発行 第3612号 掲載

市場の概況:農家減でも更新動く/広島県特集

 前年産米の価格上昇を追い風に、広島県の農機市場は久々に明るさを取り戻している。主要3機種では更新需要が動き、規模拡大を進める担い手を中心に大型・高性能機への関心も高い。

 一方で、農家、農業経営体の減少には歯止めがかからず、中山間地域では離農も進む。「売る相手は減るが、1経営体が担う面積は増える」。市場は量から質への転換を一段と鮮明にしている。

 2025年農林業センサスによると、県内の農業経営体は1万7069経営体。2020年の2万2290経営体から5年間で5221経営体、23%減少した。個人経営体は1万6267経営体で、このうち副業的経営体が1万2657経営体と8割近い。

 一方、団体経営体は802経営体と5年前の799経営体から微増した。農業の担い手が細る一方、農地や作業が地域の中核となる経営体へ集まる構図が一層はっきりしている。

 耕地面積も減少が続くが、経営体の減少はそれ以上に速い。残った担い手が引き受ける農地や作業は増えている。この構造変化が農機市場を下支えする一因だ。農家戸数だけをみれば縮小市場だが、担い手側からみれば「機械なしでは回らない面積」が広がっている。

 そこへ米価上昇が重なった。県の農業産出額は2024年に1540億円と前年の1448億円から増加。特に米は247億円から377億円と130億円増えた。農家の手取りがすべて同じ割合で増えたわけではなく、肥料、資材、燃料、機械価格の上昇も重い。それでも販売現場では、これまで更新を我慢していた農家が動き出すなど、投資意欲の改善がみられる。

 主要3機種は買い替えが中心ながら、規模拡大層では作業能力を高めるトラクタ、コンバインへの需要が目立つ。単に古い機械を新しくするのではない。増えた面積を限られた人数で適期にこなすため、より能率の高い機械へ替える意味合いが強まっている。田植機も直進アシストなど、作業者の負担を軽くする機能への評価が高い。

 半面、広島は平坦地だけではなく、県土の多くを中山間地域が占め、狭小、不整形な圃場も多い。大型化だけが答えではなく、地域によって求められる馬力、機体寸法、機能は異なる。高齢農家では高額な機械の更新をためらう例もあり、好調感には濃淡がある。

 その中で存在感を増しているのが「作業を楽にする機械」だ。ラジコン草刈機をはじめ、草刈り、防除、水管理など、省力化につながる機械・装置への関心は高い。実演をきっかけに導入を検討するケースも増え、スマート農業も「先進的な農家が使うもの」から、人手不足を補う現実的な道具に変わりつつある。県も中山間地域に適したスマート農業技術の普及を進めており、現場の需要と政策の方向が重なる。

 販売と並んで重要性を増すのが整備だ。機械を長く使う農家が増える一方、担い手が使う大型・高性能機は、止まった時の影響も大きい。特に収穫期のコンバインは待ったなし。点検、整備、迅速な修理まで含めた対応力が、販売価格以上に農家から選ばれる条件になりつつある。各販売現場でも整備人材の確保、育成は共通した課題だ。

 農家は減る。だが、農作業まで消えるわけではない。残った農地を誰かが耕し、植え、刈らなければならない。その受け皿となる担い手ほど、省力化と高能率化を求める。

 米価という追い風がいつまで続くかは読めないが、広島県の市場では「台数を追う販売」から「増える仕事をどう機械でこなすか」を提案する販売へ、主戦場が確実に移り始めている。

カテゴリー別最新ニュース